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製造現場での根本原因究明の支援システムをアジャイル開発

製造現場の問題発生の根本原因の分析事例

2021年2月 3日 13:00

次代に向けてデジタルトランスフォーメーションを推進している旭化成株式会社様。製造所で発生する問題の根本的な原因を推測する「安定操業のための支援システム」を自社内で構築する際、NTTデータ数理システムの複数のツールを連係して活用。多種大量のデータを機械学習やベイジアンネットワークなどにより解析する複雑なシステムを、わずか10カ月程度で開発、試験運用を始めている。

Profile:旭化成株式会社 様
1922年創業、アンモニアやレーヨン製造などの化学メーカーとして成長。現在はサランラップ®やリチウムイオン電池関連等の「マテリアル」、ヘーベルハウスTMなどの「住宅」、医薬品やウイルス除去装置などの「ヘルスケア」の3領域で事業を展開。20以上の国・地域に拠点を持つ。売上高21,516億円、従業員数40,689人(いずれも2019年度)。
生産技術本部
デジタルイノベーションセンター センター長
原田 典明 様
生産技術本部
デジタルイノベーションセンター IoT推進部
波並 理恵 様

生産のための大量のテキスト情報や数値データをいかに構造化するか

デジタルイノベーションセンターの業務を教えていただけますか。

原田 当社は製造業として世界に製造所を展開しています。それら既存工場の高度化や先端工場の開発、そしてその現場で先進技術を使いこなせるデジタル人材の育成をミッションとして、2018年に当センターが新設されました。ご存じの通り、労働人口は減少の一途をたどっています。また当社はまもなく創業から100年を迎えます。そのため非常に老朽化した設備も残っており、その安定稼働も急務となっています。今後も価値ある製品を効率的かつタイムリーに生産するためには、製造現場のデジタルトランスフォーメーションが不可欠です。当センターはそれを推進するとともに、改革を実践する人的資源の育成も目指しています。スタッフは現在約50名で、生産管理や製造機器関連をはじめ、サーバーやネットワークなどのIT系、AIやデータサイエンティストなど、各分野のスペシャリストが集まっています。今回、安定操業のための支援システムを開発した波並も、そういった1人です。

このシステムを開発されたいきさつを教えてください。

波並 私は製造所のメンバーと会話を重ね、実証ベースで課題解決や生産技術の新開発を行っていますが、その中で「製造ラインで同じような問題が繰り返し起きる」という声がありました。解決には、問題の根本原因を探る必要があります。ディスカッションを繰り返したところ、ヒントとなりそうな操業日誌や設備運用などのメモ、各種報告書、数値データなどが数多くあるものの分散し、活用されていませんでした。それらのデータを集め、多角的に解析できるようにすれば、問題発生の根本原因を探れそうだと考え、検討を開始しました。

NTTデータ数理システムの解析ツールを複数活用されたそうですね。

波並 日誌やメモなどのテキストデータ、設備やセンサーなどからの各種数値データを、どのように構造化すれば汎用性高く解析・推論できるか。まずデータ処理の方法を試し、結果を比較検討するところから今回の開発を始めました。NTTデータ数理システムの各種ツールは、当センターでも導入していました。それらのツールを組み合わせると、テキストや数値データの前処理や成型、処理後のデータ可視化を効率的に行えるだけでなく、解析では複数のアルゴリズムを並列に配置してその結果を容易に比較できます。しかもそのテキストや数値データのまとめあげ作業と分析が、1つのプラットフォーム上で、ワンストップで完結できる点が非常に便利です。

上流の生産工程までさかのぼり、根本原因を解析する

各種ツールをどのように連係して開発されたのですか。

波並 解析の流れとしては、まず Visual Analytics Platform(以下、VAP)で収集したテキスト情報や数値データの前処理を行います。データは大量でノイズも多く、そのままにしておくと解析結果に影響が出るため、できるだけ精度高くクリーニングします。その上で Text Mining Studio(以下、TMS)で文章の処理を行い、原因究明のヒントとなるテキスト情報を抽出します。それに対応したアラートなどを Visual Mining Studio(以下、VMS)や Visual R Platformで洗い出します。生成したデータをVMSでアソシエーション分析したり、機械学習を活用して、どのアラートの優先度が高いかなどをリストアップしたりします。さらにBayoLinkSにより、問題ごとにどこに原因がありそうかといった推論を行います。システム開発は2020年2月にスタートし、10カ月程度で運用試験のフェーズに入りました。構想からフルスクラッチによる開発でしたが、機能の検証段階でこれらのツール群を連係できたことにより、スモールスタートでも急速な立上げとアジャイル開発に近い形を実現できました。いまは本格的な運用に向けて、オリジナルプログラムで構築を進めています。

旭化成様におけるソリューション設計の流れ

①テキストマイニング → ②傾向分析 → ③数値解析 → ④RCA状況分析 → ⑤関連性分析 → ⑥個別分析

各ツールの使い勝手はいかがでしたか。

波並 VAPでは各処理のアイコンをビジュアル的につなげて解析アルゴリズムを作りますが、それが思考の整理に役立ちました。
テキストマイニングでは、どういう言葉を辞書に登録し、どうグルーピングしていくか、現場の熟練者とディスカッションしてまとめていく必要がありますが、TMSの辞書データとグルーピングデータを用いて得た結果が人間の記述意図に即した状態で検出されているか、VMSの分析機能で検証しながら進めることで、有効性の高いデータを短時間で構築できました。
問題を個別に解析する場合、分析に必要となるデータが必ずしも揃うとは限らず、所定の入力情報を全て必要とするタイプの機械学習手法では解析できません。そこで情報セットのどこかに欠損があっても推論可能で、入力・出力項目を固定しなくても推論を実施できる自由度の高いベイジアンネットワークが適していると考え、BayoLinkSを活用しました。

このシステムはどのように機能するのですか。

旭化成様における根本原因予測例

波並 日誌などの記述から人間が記録した状態とその推移や関連性を拾い上げ、センサデータから人間が拾いきれなかった詳細な装置の異常ポイントを見つけ出し、構造化された過去の蓄積データをもとに最終的な根本原因を予測する。こうした一連の解析をこのシステムで実現しています。製造所のスタッフが蓄積してきた日誌などの情報や製造データを活用した、デジタルトランスフォーメーションの1つといえるでしょう。
また上流工程が下流工程に与える影響を測る、つまり時間をさかのぼって解析することはこれまで難しかったのですが、それを可能としています。例えば上図のように、顕著な問題を発生させている設備Eに対して、上流工程や周囲の設備も含めてその影響度合いを解析し見える化できます。こうした機能を持つシステムはいままでになく、現在特許を出願中(2021年1月現在)です。

今後の運用や展望をお聞かせください。

波並 製造所では、毎日の作業の中で情報やデータがアップデートされています。それらを解析し、結果をシステムに取り入れ、常に最新状態のシステムで解析を行うサイクルを回すことで、安定操業のための技術知見を見える化し、その継承を進め、次世代の製造設備の新しい保全方法や製造アプローチの確立につなげていけたらと考えています。

おわりに

今回は、データマイニングに必要なデータの前処理から、データの分析・処理まで、高機能なツール群を簡単に利用することのできる汎用ツール「Visual Mining Studio(VMS)」、簡単な操作で本格的なテキストマイニングが行えるツール「Text Mining Studio(TMS)」、多くの統計手法を簡単なマウス操作で実行できる汎用の統計解析ツール「Visual R Platform(VRP)」、および大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLinkS」を活用された事例についてご紹介しました。それぞれ、定期的に製品について紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。

▼現在開催中のセミナー
https://www.msiism.jp/seminar/

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。