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- LLMとは?大規模言語モデルでできることとビジネスに活用する方法
2023年10月24日 17:00
LLMは現代ビジネスを革新させる技術として注目を浴びています。 この記事では、LLMが業務にどのような価値をもたらすのか、実際の活用事例とともに詳しく解説します。
LLMについて
LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)は、ディープラーニングを基盤としたAIモデルです。 2018年にGoogleにより公開されたBERTが一躍脚光を浴び、多くの企業がこの分野での開発を競ってきました。 2023年現在、OpenAIのGPT-3.5、GPT-4(サービスの例:ChatGPT)が有名ですが、その他にもGoogleのPaLM 2(サービスの例:Bard)やMetaのLlama 2(オープンソースで利用可能)などがあります。 日本国内の企業も、日本語の精度を向上させるためのLLMの開発に取り組んでいます。
LLMの根本としては「次にありそうな単語(もしくはマスクされた単語)は何か」というタスクを連続して解かせているだけなのですが、 公開されているテキストデータ、ウェブページの内容、学術論文などの膨大なテキスト情報(データセット)を基に学習して、 情報の提供、文章の生成、質問への回答など、多岐にわたる言語関連タスクにおいて優れた性能を発揮しています。
LLMの活用事例
イメージが浮かびやすいよう、具体的な応用例をご紹介します。LLMの特長ごとに分類しています。
1. 休みなく働かせることができる(物量)
- 24時間対応のカスタマーサポート:休みなく顧客の質問に回答し、サポートを提供する
- データモニタリング:絶えずデータの流れを監視し、異常を検知する
- 常時更新のニュースサイト:最新情報を絶えず更新し、ユーザーに提供する
2. 自然言語で指示できる(ノーコード)
- 市場調査の自動レポート:指定されたキーワードやトピックに関する情報を収集し、レポートとしてまとめる
- 企業内ツールのカスタマイズ:特定の業務要件に応じて、既存のツールの機能を変更や拡張する
- 教育用コンテンツの生成:指定されたトピックに基づいて、カスタムの教材やクイズを自動生成する
3. ユーザーに個別によりそうことができる(カスタマイズ性)
- パーソナライズされたニュースフィード:ユーザーの興味や閲覧履歴に基づき、個別のニュースや記事を提供する
- オンラインショッピングのレコメンデーション:ユーザーの購入履歴や閲覧履歴から、次に購入する可能性が高い商品を推薦する
- 個別指導の教育プラットフォーム:学生の学習進度や弱点に合わせて、カスタムの学習プランや教材を提供する
4. 常識や論理的関係を踏まえた人間のような応答ができる(人間らしさ)
- FAQボットの応答:顧客の質問に人間らしい形での回答を提供し、人間のサポート担当者と同じような体験を実現する
- TRPG(テーブルトークRPG)のゲームマスター:ユーザーの選択に応じて対話し、ストーリーを進行する
- 面接トレーニングツール:応募者の回答に対して、適切なフィードバックや質問を行うシミュレーションツール
5. 曖昧な指示からアクションを決めることができる(行動)
- スマートホーム制御:住宅の照明、暖房、セキュリティシステムなどを制御する指示をLLMに与え、それに基づいて各デバイスを操作する
- 工場の生産ライン制御:生産状況や在庫情報を元に、生産ラインの速度や稼働機械を最適化するための指示をLLMから受け取る
- 自動車の運転支援:運転手からのコマンドや外部のセンサー情報に基づき、車の特定の機能(エアコン、ナビゲーション、音楽再生など)を制御する
- IoTデバイスの遠隔操作:ユーザーのスマートスピーカーでの要求に基づいて、家電、IoTデバイスなどを操作・制御する
このように広範囲の業務やサービスに組み込むことができ、業務効率や利便性を高めることが可能です。
LLMが苦手なこと
今日のLLMは非常に多様なタスクに対応できる能力を持っていますが、技術的に以下のような点が苦手とされています。 (※プロンプトの工夫などで改善可能なものもあります。)
- 幻覚(ハルシネーション):事実に基づかない、誤った情報を生成することがある
- 最新の情報: LLMの知識は最後の学習時点までのものなので、それ以降の最新の情報や出来事については知らない
- 深い専門知識: 高度に専門的な質問や特定のニッチなドメインの内容については、不正確な答えをすることがある(※汎用LLMの場合)
- 長い文脈の理解: 長い文脈や多段階の複雑な推論を必要とするタスクは難しい
- バイアス: 学習データに含まれるバイアスを反映することがある。これにより、偏見を持った答えや不適切な内容を生成するリスクがある
- 一貫性の欠如: 同じ質問を異なる形で何度か繰り返すと、異なる答えをすることがある
特に「1.幻覚(ハルシネーション)」については、使い勝手や情報の信頼性の上で大きなネックとなります。 特に重要な情報や技術的な詳細については、LLMの回答を鵜呑みにせず、他の信頼できる専門家の意見、 資料や情報源と照らし合わせて確認することが必要です。
また、「2.最新の情報」、「3.深い専門知識」や「非公開情報」のような未学習の知識についても答えさせたい場合は、追加で教えてやる必要があります。例えば、会社独自の技術ドキュメントや製品データベースの内容を取り入れて応答させたい場合、それらのドキュメントをご用意いただく必要があります。
プロンプトインジェクション攻撃
LLMを活用したAIチャットボットサービスへの攻撃手法はさまざま存在しますが、代表的な攻撃の一つがプロンプトインジェクション攻撃です。
サービス提供者はユーザーに有害な回答をさせないように、モデルに対して様々な制限を設定します。
しかしながら、悪意のあるユーザーがこれらの制限を狡猾に回避する質問や指示(例:システムの指示を無視させるなど)を行うことで、システム内の機密情報を窃取される、もしくはフィッシングメール・マルウェアの作成に悪用されるなどの恐れがあります。
そのため、AIサービスを安全に運用するには、厳密なユーザー認証や入出力のチェックといった
一般的なウェブセキュリティ対策のほか、プロンプトのフォーマットを工夫するなど、
特有の防衛策を導入することが求められます。
組織内活用を推進するにあたって
組織全体でLLMを効果的に活用するためには、多くの点に注意を払う必要があります。
セキュリティと機密性は特に重要です。企業のデータはその命の源ともいえるため、LLMを外部のサービスとして利用する際には、 高度なセキュリティガイドラインの設定やデータ保護の対策が必要です。
また、コスト面の計画も欠かせません。特に高度な機能を利用する場合や、大規模に導入する場合、 APIの料金などで予期せぬ出費が発生する可能性があるため、事前の試験運用を通じて必要な予算を見積もることが推奨されます。
効果的な利用を促進するためのトレーニングや研修も大切です。特にITリテラシーが一律でない組織では十分な配慮が必要です。 ここまで述べてきたLLMの特性や課題点を理解することで、その能力を最大限に活かして業務の生産性をあげることができます。
最後に、組織内でのLLMの使用に関するフィードバックや改善提案を継続的に吸い上げる取り組みもあれば望ましいです。 これにより、サービスの品質を継続的に向上させることができるとともに、新しい利用シナリオの発見をサポートします。
これらの点を踏まえ、LLMの活用を組織内で進める際のガイドラインやフレームワークの作成を進め、 組織全体で共有し、普及させていくことで、その真の価値を最大限に引き出すことができます。
LLMと先端技術の新しい活用法
LLMに感じる魅力は、特に「迅速なアイデア検証」が可能になることです。 従来のAI手法が高い精度を持つケースは多々ありますが、LLMは簡単な指示を与えるだけで 結果を得られる点が特徴です。これはプロトタイピング段階での価値確認に非常に有効です。
少ない時間とリソースで、簡易なフレームワークを用いてLLMベースのモックアップを作成することで、 ユーザ体験の実証を迅速に進めることができます。そして、このモックアップが期待通りの結果をもたらす場合、 それを基に本格的なシステム開発へとステップアップすることが考えられます。
スケーリング則から見るLLMの進展と課題
LLMの進化の限界はまだ明確に見えていません。モデルのサイズ(パラメータ数)、計算量やデータセットの拡大とともに、 そのパフォーマンスも向上しています。この現象は言語モデルの「スケーリング則」として知られます。
このようなモデルの学習では、多数のGPUやスーパーコンピュータの利用、 そしてそれに伴う電気代といった膨大なコストが発生します。 このため、OpenAIのような資源を持つ一部の企業や組織が高性能なモデルの開発において 先行している面があります。多くの実用的なチャットサービスなどもこれらの高性能なモデルを ベースとして開発しており、モデル自体の性能差がない場合、プロンプトエンジニアリングや ファインチューニングを活用してサービスの差別化を図っています。
一方で、モデルサイズを効率的に抑えながらも実用的な性能を持つLLMの研究開発や、 オープンソースとして提供されるLLMの取り組みも進行中で、今後の進展が注目されています。
関連技術
補足として、LLMと深く関連する技術についてご紹介します。
生成AI
LLMはテキスト生成に特化したAIモデルです。一方、拡散モデル(Diffusion Model)のような手法は、主に画像の生成タスクに適用されています。 このように、特定の条件や入力に基づき新しいデータを自動生成できるモデル全般を「生成AI」と呼びます。
基盤モデル
基盤モデル(Foundation Model)とは、大規模なデータセットで事前に学習されたモデルを指します。このモデルからタスクを特化した高性能なモデルを 少量のデータセットで構築することができます。 LLMは、大量のテキストデータで学習され、言語の多様なパターンや知識を持つ基盤モデルとなることが可能です。 特定の業界や分野に適応させるために、このLLMをさらにファインチューニングすることで、専門的なAIモデルを効率的に構築できます。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます。Web検索が広告宣伝というアイディアと結びついてはじめて ビジネスの世界で大きく普及したように、LLMはアイディア次第でビジネスに新たな価値をもたらすことを確信しています。 新しい活用法やその可能性を一緒に議論しながら深化させていただけるお客様とのコラボレーションを心待ちにしております。
ご不明点、疑問、またはご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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