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- 逆問題解析(逆解析)とは?数理最適化とシミュレーションによるアプローチ
2022年1月28日 15:00
逆問題解析とは
通常のシミュレーションは、「支配方程式」と「種々の条件」から「応答」を求めるものです。
この際に課す条件には、初期条件、境界条件、負荷があります。例えば、熱伝導シミュレーションでは、構造体内部に熱源を設定した上(負荷)で熱伝導方程式を解き、構造体表面の温度分布(応答)を得ることができます。
その一方で、あらかじめ「応答」が分かっていて、それから「支配方程式」や「種々の条件」を求めたい場合もあります。
例えば、構造体表面の温度分布が観測データとして取得できていて(応答)、それから構造体内部のどの位置に熱源があるのか(負荷)を特定する問題があります。
このような問題は、通常のシミュレーションとは入力と出力が逆になっており、逆問題解析と呼ばれます。逆問題解析は、熱源特定の他にも、非破壊検査、最適形状作成、最適制御にも適用できます。
逆問題解析と通常のシミュレーションの違い
最適化を用いた逆問題解析
逆問題解析の実現方法の一つとして、「最適化アルゴリズム」と「シミュレーション技術」を連携させる方法があります。 従来の取り扱いでは、「最適化ソルバ」と「シミュレータ」の間でデータのやり取りを行うことで求解を行っていました。 しかしながら、昨今、偏微分方程式制約付き最適化(PDE constrained optimization、PCO)という枠組みが提案されるようになり、「最適化ソルバ」が「シミュレータ」を取り込む形に拡張できるようになりました。 このような手法は all at once 法と呼ばれます。一方で、従来の取り扱いは、black box 法と呼ばれます。
- all at once 法
「最適化ソルバ」が「シミュレータ」を取り込む形で実現され、両方の計算が一括して行われます。
シミュレータに手を入れることが出来るため、様々な問題に対して、柔軟な対応が可能です。 - black box 法
「最適化ソルバ」と「シミュレータ」が独立で、それらの間でデータのやり取りを行うことで求解します。
既存のシミュレータをそのまま使うことができます。
当社には、各種の最適化アルゴリズムを備えた汎用ツール、およびシミュレーションの豊富な実績がありますので、どちらの方法にも対応できます。 お客様が解かれたい問題を分析した上で,その特性にあった手法をご提案致します。
最適化アルゴリズムとシミュレーションの連携手法
all at once 法
従来より用いられてきた black-box 法では、既存のシミュレータをそのまま使える反面、問題によっては計算時間に課題がありました。この点に対処できるのが、all at once 法です。
この手法では、離散化された支配方程式が制約に加わり、パラメータと物理量を同時に解きます。
そのため、(black box 法では扱われることのない)物理的に意味のない領域まで経路を広げることや、問題の構造を考慮した解法を用いることで、black box 法より早く最適解を求めることができます。
all at once 法の利点
black box 法
black box 法は、シミュレーション中の変数(順問題変数)とシミュレーション中のパラメータ(逆問題変数)を交互に変化させる手法です。
通常、商用シミュレータの詳細な実装内容は明らかではありません。black box 法の中には、このようなシミュレータに対しても適用できる手法もあります。
この場合、「最適化ソルバ」と「シミュレータ」が独立で、それらの間でデータのやり取りを行うことで求解します。
最適化を行うには目的関数を与える必要があります。しかし、シミュレータがブラックボックスであれば、目的関数の数式表現(目的関数の微分値等の取得)は困難です。
このような場合に用いられる最適化アルゴリズムの一つに、Derivative Free Optimization(DFO)があります。
モデル関数の構築
逆問題解析の事例
[ all at once 法]表面データを用いた内部構造の推定
局所的に性質の異なる媒質が設定された対象に対して、外部から粒子を注入し、周囲に置かれた観測器でデータを取得します。 そのデータから、内部構造(媒質の分布)を推定いたしました。本解析には、all at once 法を用いました。
内部構造の推定結果(右)と正解分布(左)の比較
[ black box 法]形状パラメータの自動決定
圧電材料は「電圧」を「機械的な歪み」に、もしくは「機械的な歪み」を「電圧」に変換可能な材料です。
ここでは、前者の性質を用いた振動子を対象として、所望の振動波形になるような形状パラメータを自動決定しました。
細長く加工した Si の上に圧電薄膜(PZT)を積層させ、その上下電極に電圧を加えると、圧電膜に歪みが発生し、厚み方向に撓みます。正弦波電圧を加えると、構造体(片持ち梁)が振動します。
本解析では、振幅1V、周波数1kHzの正弦波電圧を入力した場合、所望の振動波形になるように、Si および圧電膜(PZT)の厚みの値を自動決定いたしました。
解析モデル(左)と抽出結果(右)の比較
ここでは、black box 法 を用いました。
最適化ソルバとして Nuorium Optimizer を用いた DFO アプローチ、シミュレータとしてマルチドメインシミュレータ MEMSpice を用いました。
両者を繋ぐために、目的関数値の計算プログラムを作成し、「所望の波形」と「シミュレーションで得られた波形」から、差分(ここでは、波形の各点の Euclid距離の平均)を計算するようにしました。
このように最適化部分とシミュレータ部分を独立に用意し、black box 法による逆問題解析が実現できます。
black box 法の実装例
システム化
当社の汎用最適化パッケージ『Nuorium Optimizer』を用いたラピッドプロトタイピングで、システムを構築・課題の洗い出しを行います。それをもとに、扱いたい問題に合わせたシステムを構築いたします。
システム化のフロー
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