数理最適化交流会 2020 の開催ご報告

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数理最適化交流会 2020 の開催ご報告

2020年11月11日 09:30

※「Numerical Optimizer」は2022年3月28日より「Nuorium Optimizer」に名称変更しております。

数理最適化交流会2020の開催ご報告

NTTデータ数理システムは10/30に数理最適化交流会2020を開催しました。アカデミックの研究者と実務で活躍されている技術者が交流することによる数理最適化の更なる発展を願って開催しました。当日は当社の想像以上に盛り上がりました。

この記事では各ご講演の内容をダイジェストでお送りします。

大阪大学 梅谷俊治様「組合せ最適化による問題解決の実践的アプローチ」

ご自身の経験を存分に含んだ問題解決のアプローチ方法を、数理最適化を初めて知る方にも分かりやすく伝えるご講演でした。AI 技術としてデータマイニングや機械学習が注目される中、古くからある数理最適化(数理計画)が何故重要なのか、数理最適化を実務に適用する際のポイントなど、経験を元に話されているので非常に説得力のあるご講演でした。特に、数理最適化を適用する際に計画作成プロセスの自動化を目標として設定するお話や、数理最適化導入によって計画担当者に入力データを作成する新しい業務が生じるのは本末転倒といったお話など、実務に携わる技術者の身にも染みるようなお話が印象的でした。

NTTデータ数理システム 藤井浩一「数理最適化におけるアカデミック研究とソルバ開発の邂逅」

当社製品の Numerical Optimizer はアカデミアからのご協力無しに開発できなかったことを強調した講演でした。具体的には自身の長期海外出張の経験も交えながら、4つの事例を紹介しました。

  • 離散最適化の研究で有名なドイツのZIB研究所でおこなった切除平面の研究
  • ZIB研究所の品野先生からご指導いただいた並列分枝限定法の開発
  • 理化学研究所の前原先生とおこなった分枝限定法パラメータチューニングの研究
  • 京都情報大学院大学の茨木先生、法政大学の野々部先生、大阪大学の梅谷先生らが研究されている重み付き局所探索法

国内研究者による数多くの成果がある中でそれらを「実装していく」という当社の使命を述べ、講演を通じて当社社員としての役割を再認識しました。

成蹊大学 加藤尚瑛様「解の多様性を目指した複数解生成」

成蹊大学の修士1年生である加藤様のご講演です。ナーススケジューリングの課題に深く踏み込んだご講演でした。具体的には数理最適化を用いたナーススケジューリングの実用化に向けて、様々な状況に対応できる柔軟かつ高速求解が可能なモデルの開発と、多様な解を生成してユーザーが解を取捨選択できるようなモデルの開発についてご紹介になりました。数理最適化では目的関数を設定しますが担当者によって計画に対する好みが違うので、多様な解を生成することは実務でも重要です。実務を意識された研究内容であり、数理最適化の実務活用を目指す当社にとっても大変参考になるご講演でした。

NTTデータ数理システム 多田明功「実務における数理最適化技術と実践」

実務で数理最適化を用いると入力データによっては実行不可能(制約を満たす解が一つも存在しない)になることがあります。この実行不可能なケースに対してスラック変数を導入することで解が得られますが、実務において「本当にそれだけの対処で十分か」という疑問を提示しました。数理最適化の現場に関わり続けて得られた知見を述べ、数理最適化エンジニアだけでなく数理最適化を導入する担当者へのメッセージも含んだ講演でした。

株式会社IHI 小熊祐司様「工場ピーク電力抑制を目的とした生産設備運転計画最適化 ―最大値最小化とメタヒューリスティクス― 」

工場のピーク電力抑制を題材にし、数理最適化技術の話と数理最適化エンジニアとして重要な点をまとめた、内容の濃いご講演でした。最大値最小化問題と分枝限定法の相性が悪いためメタヒューリスティクス解法に移行し、探索を高速化するために計算方法を工夫された話や、独自の近傍操作を定義したソルバを開発された話は非常に興味深い内容でした。また、PDCAサイクルを高速に回すことの重要性、解けない問題に対するアプローチ手順、デモソフトウェアを作り顧客に説明するお話など、数理最適化エンジニアとして大変参考になる事項が盛り沢山のご講演でした。

名古屋大学 奥田裕之様「自動運転における実時間最適化とモデル予測制御」

自動運転におけるモデル予測制御のご講演でした。環境認識や自身の位置を推定するのに深層学習が使われていますが、障害物や他車を考慮した上で軌道を計画・制御する技術に数理最適化を使う研究をご紹介になりました。具体的には数秒先までの状態方程式や安全制約などを考慮して最適化をおこない、実際に車両を動かして得られた観測結果を用いて再び最適化をおこないます。軌道計画に基づいて車を走らせた動画も見せていただき「数理最適化が目に見える形になる」ことを実感できました。

また、数理計画ソルバ Numerical Optimizer を開発している当社に向けて、ソルバの改良として大変参考になるご意見をいただきました。ご期待に応えられるように Numerical Optimizer の開発に努めてまいります。

パネルディスカッション

パネルディスカッションではご講演者がパネリストとなり、複数のテーマに関して意見交換をおこないました。

非常に活発な議論がおこなわれたため、別の記事としてまとめたいと思います。

最後に

どれも興味深いご講演で、参加者の方との質疑応答も盛り上がり、当初の目的である研究者と技術者の交流を達成することができました。ご講演者の方々、参加していただいた方にはこの場を借りてお礼を申し上げます。来年も開催しようと企画していますので、ぜひ期待してお待ちいただけたらと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

(所属は記事執筆当時のものです)

監修:株式会社NTTデータ数理システム 機械学習、統計解析、数理計画、シミュレーションなどの数理科学を 背景とした技術を活用し、業種・テーマを問わず幅広く仕事をしています。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること
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