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- AI・機械学習・シミュレーション・最適化のデータサイエンス最新事例を多数講演!数理システムユーザーコンファレンス2019開催レポート
2020年6月16日 14:16
※「Numerical Optimizer」は2022年3月28日より「Nuorium Optimizer」に名称変更しております。
数理システムユーザーコンファレンスとは
当社ソフトウェアユーザー様による事例発表、講演を通じて、ユーザー様間で情報の共有、知識の向上をはかっていただくとともに、交流を深めていただく場となることを目的としております。さらには本コンファレンスを通じ、微力ながらも国内の科学技術振興に寄与することが当社の願いです。毎回、さまざまな分野での興味深い発表に、参加者のみなさまからもご好評をいただいております。
2019年度の数理システムユーザーコンファレンスは11月22日東京コンファレンスセンター・品川にて開催され、当社のお客様から21件の事例をご講演いただき、600名超の方にご来場いただきました。
講演資料は数理システムユーザコンファレンス2019からダウンロードできます。
以下のレポートは「日経コンピュータ1月23日号」に掲載した記事の再掲です。記事のpdfはこちらからダウンロードできます。
中央大学 田口東先生による基調講演 ~2020年東京五輪で起き得る混雑の課題は大きく二つ~
基調講演には中央大学の田口東氏が登壇した。2020年東京五輪の期間中に首都圏の鉄道がどのような混雑状況になるのかをシミュレーションし、その結果を披露した。
首都圏の鉄道利用者は1日約800万人。ここにオリンピック観戦客が、多い日には65万人加わる。課題は大きく二つある。
- ①競技の開始・終了と同期して競技会場につながる路線と最寄り駅が混雑する
- ②ラッシュ時に観戦客利用が重なり主要な路線・乗換駅で混援ができるまでに育ってもらいたい」
である。
課題①では、競技会場の最寄り駅があるりんかい線やゆりかもめの路線が特に問題で、通常の2倍を超す乗客を輸送することになる。解決策としては、観戦客が利用する駅やルート、到着時間を分散させて混雑を平準化することが有効そうだ。田口氏は、会場へのアプローチに複数の選択肢を提示し観戦客に協力してもらうことで、混雑が平準化されていく様子をグラフで示した。
課題②は、そもそも通常客が多いうえに、首都圏の複雑な鉄道網に不慣れな訪日外国人などが加わる。観戦客に、新宿駅のような便利な乗換駅を避けてもらうことは期待できない。そこで、通常客の利用を減らす対策が必要になる。テレワークや時差通勤、あるいは休日にしてしまうなどの方法で、ラッシュ時の利用を控えてもらうのだ。田口氏はその効果もグラフで示した。
ネットワーク全体の問題は数理モデルの最適化手法で解き、駅構内人流シミュレーションには S4 Simulation System を活用した。
データサイエンティスト育成3カ年計画で事業支援の戦力に
基調講演の後、5つの会場に分かれて20件のユーザー事例が発表された。
村田製作所は、社内にデータサイエンティストを育成すべく3カ年計画を立てた。今後の開発競争を勝ち抜くには AI や数理科学の助けがどうしても必要になるという認識から、多くの事業部門で技術に関心のある人が独自に先行開発を始めていた。だが、それだけでは社内で必要な人数は育たないし、特定の手法や特定の応用領域に偏った人材になってしまう恐れがある。そこで共通基盤技術センターが旗振り役となって、全社的な育成に取り組むことにした。
2019年6月に座学を始め、同年9月には総合演習に取り組んだ。演習テーマは電子部品の村田製作所らしく、各種センサーを搭載したタグからデータを取得し分析するというもの。育成計画の3年目には「製品開発や事業支援ができるまでに育ってもらいたい」と児堂義一氏(共通基盤技術センター長)は言う。研修の計画立案や座学の講師、ツールの利用方法などでNTTデータ数理システムが協力している。データサイエンティストを育成する事例はJFEスチールの茂森弘靖氏も前回のユーザーコンファレンスで語っていた。大きな流れになる可能性がある。
東京エレクトロンの岩永修児氏は、同社の主力製品である半導体製造装置をシミュレートする取り組みを紹介した。
同氏によると、これまで半導体製造装置に求められていた目標は微細化・高集積化であり、標準的なデバイスをコストパフォーマンス良く製造する方向だった。ところが今は、微細化を伴わない大量生産用途の装置や、設計・製造プロセスを頻繁に変更する必要があるカスタムデバイス向け装置にニーズが出ているという。
これまでとは目標の異なるこうした製品を開発していくにあたり、同社は実機を試作する前にサイバー空間上でウエハー搬送や生産性をシミュレーションできるシステムの開発に取り組んだ。シミュレーション技術にはNTTデータ数理システムの S4 Simulation System を使った。
既存の半導体製造装置で確認したところ、約1時間かかる実工程であれば、約1秒で実機とほぼ同じ結果をシミュレーションで得られた。今後は新装置の設計に活用したいという。
複数の物流会社の配送をマージ 不利益が出たらAI同士が交渉
物流分野での利用を提案したのは沖電気工業だ。AI技術研究開発部の樋田愛氏は、複数の配送計画を最適化する研究を披露した。まず複数の物流会社から配送計画を集める。その後、「A社の計画aとB社の計画bをマージすれば運行トラック数を減らせる」など、配送計画を横断的に調整して新しい計画に組み直して各社に戻す。
このとき問題となるのは、物流会社によっては受注した荷物を他社に委譲し売り上げが減る場合があり、せめぎ合いが起こること。そこで、物流会社ごとに設定した AI が人に代わって交渉するようにした。現在、S4 Simulation System と Numerical Optimizer を活用して、プロトタイプを構築中だという。
数理システムユーザーコンファレンスでは毎回、学生奨励賞の発表がある。学生の学術研究の支援・啓発および発表の場の提供を目的としたものだ。今年は、多くの観光客が押し寄せる京都のオーバーツーリズムの状況を S4 Simulation System を使って評価した早稲田大学大学院の中田一朗太氏が最優秀賞に輝いた。
今回のコンファレンスの参加者は600人超。全員が熱心に聞き入っていて、聴衆からも数理科学のアプローチを取り込もうとする本気度が伺えた。
登壇者と講演タイトル
【基調講演】数理計画法とシミュレーションで考える首都圏電車の混雑 -2020東京オリンピック開催時,どうなる- | 中央大学 田口 東 様 |
村田製作所におけるデータサイエンティストの育成と将来への期待 | 株式会社 村田製作所 児堂 義一 様 |
半導体製造装置におけるウェハ搬送シミュレーションモデルの開発 | 東京エレクトロン 株式会社 岩永 修児 様 |
「BayoLink と VAP を用いた解析と応用事例」 | 花王 株式会社 井伊 篤彦 様 |
ローリー車による液化天然ガス(LNG)販売事業のロジスティクス最適化の実現に向けて | 東京ガス株式会社 西井 匠 様 |
マーケティング4Pから5Pへ。ブランドを体現する 人財ブランディング Text Mining Studio 活用事例 | 株式会社リコー 谷古宇 啓之 様 |
CRMプランニングにおける顧客データ分析 | 株式会社パルコ 安藤 彩子 様 |
ID-POS分析と AI、仮説検証に AI をどう適用し、実践に活用するか Visual Mining Studio(PLSA)、BayoLink、DeepLearner の PDCA への適用方法 | 株式会社 IDプラスアイ 鈴木 聖一 様 |
ビッグデータ×AI時代のテキストリファイニング技術~特許文書を例にしたテキストデータアウェアネスの獲得~ | 株式会社 アナリティクスデザインラボ 野守 耕爾 様 |
ビックカメラ様への「勤務計画システム」適用事例のご紹介 | 鉄道情報システム株式会社 寺岡 洋一 様 株式会社ビックカメラ 吉沼 由紀夫 様 |
MR日報の解析による販売政策の一例:TMS と BayoLink を用いたシミュレーション | ミリマン・インク 岩崎 宏介 様 |
論文と特許のクロス分析による産学連携支援 | 財団法人 京都高度技術研究所 開本 亮 様 |
新事業創出にこそ S4 を~「わたしは、私。」のシミュレーション~ | 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 松下 悠人 様 |
サービス業における顧客満足度調査の分析~改善活動につながるテキストマイニングの活用方法~ | 株式会社 MS&Consulting 前原 直斗 様 |
お客様の声の分析コンサルティング~TMS の真価を引き出すアプローチ~ | パーソルラーニング 株式会社(旧社名:富士ゼロックス総合教育研究所) 塚本 由美 様 |
テキストマイニングを用いたコールセンターの応対品質評価への取り組み | ビーウィズ 株式会社 田辺 文彦 様 佐藤 香 様 |
VMS・TMS・Deep Learner でサクッと自然言語処理 | 株式会社 soda 倉田 陽右 様 |
製造業向け 統計解析で組み上げる工場のオートメーション化 | 株式会社 NTC 佐藤 城太 様 |
Numerical Optimizer が変える線路のメンテナンス | 公益財団法人 鉄道総合技術研究所 三和 雅史 様 |
マルチエージェントの協調・交渉による動的最適化と合意形成~物流輸配送計画最適化への挑戦~ | 沖電気工業 株式会社 樋田 愛 様 |
IT がつなぐ想い 青年海外協力隊の最適マッチング | 独立行政法人 国際協力機構 澤田 純子 様 |
講演資料は数理システムユーザコンファレンス2019からダウンロードできます。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること