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Profile:太陽誘電株式会社様
1950年3月設立。1988年、世界初の追記型光記録メディア「CD-R」商品化。主な製品に、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、モバイル通信用デバイス(FBAR/SAW)、回路モジュール、アルミニウム電解コンデンサ等。日本のほかアジア諸国、北米、欧州に生産、販売の拠点を展開。
営業レポートには事業のヒントが記されている。それを可視化したい
社内の営業レポートの可視化に取り組んでいらっしゃいますね。
下津 私たちIT販売企画部では、当社事業データの可視化を推進しており、それを通じて営業・生産の活動をサポートしています。また、DX による営業活動の効率化もミッションの一つです。これまで売上や在庫といった数値データに関しては、データベース整備やBIツール導入などによって、可視化を進めてきました。次のフェーズとして、営業レポートのテキスト情報の可視化にも取り組んでいます。
営業レポートの可視化に取り組まれた理由や目的を教えてください。
下津 アジアや欧米を含む当社の全拠点の営業から上がってくる営業レポートには、お客様企業や業界の景況観、いま売れている商品、新製品への要求内容、市場の見通し、といった“生の声”が数多く記されています。それらをテキストマイニングし、スコア化して時系列で見れば、市場の動向を可視化できると考えたのです。
そこで、数値データと同様に営業レポートを格納するサーバーを用意し、レポートのテキストファイルを蓄積し、全社員で共有できる環境を作りました。ただ、これでは内容を可視化できているとはいえません。テキスト情報の加工や解析を行い、業務に役立つ情報に仕立てて提示する必要があります。当初は、解析対象となるレポート件数、月平均1000件ほどを人力で加工・解析していました。そのため、作業の精度向上や効率化のために、テキストマイニングツールを導入しました。
TMS導入の決め手について教えてください。
湯本 テキストマイニングにあたっては当初、フリーのツールを試してみました。ですが、結果の内容は、社内では当たり前のことばかりで、営業にフィードバックできるような有益な情報は得られませんでした。また、業界特有の特殊な単語になると出現頻度が低いせいか、思うような分析結果を得られませんでした。さらに、私たちが必要とする時系列による分析機能もありませんでした。
下津 さまざまなツールを試して最終的に TMS にたどり着きました。まず注目したのがポジネガ分類です。テキストの内容がポジティブかネガティブなのかを判別する機能で、これでお客様の発言を分類できれば、現在の状況を良いと捉えているのかそうでないか、可視化できると考えたのです。
また、私たちが必要としていた時系列による分析機能も備えていました。加えて、オンプレミスで運用できることも、今回のような外部に漏らすことのできないデータの解析という点で、導入の決め手になりました。
市場動向の可視化は、どのように行っていますか。
湯本 営業から送られてきたレポートを製品ごとに分け、TMS でポジネガ分類をした後、分類結果を時系列で処理する。これが解析の基本的なプロセスです。その前処理として、製品の表記ゆれ(意味は同じだが、表記の違いがある単語)のまとめあげなどを行っています。ポジネガ分類は、現在のところ私たちが確認しながら行っています。その理由としては、この解析作業を始めて1年程度で辞書がまだ充実していないことと、テキスト特有の揺れのある表現があることが挙げられます。特に日本人はぼかした書き方が多く、現状ではチェックが必要です。
この作業は TMS なら簡単にできます。問題のありそうなテキストをTMS上でクリックすれば、原文とともにそのテキストが分かりやすくハイライト表示されるので、前後の文脈を読んだ上でポジネガの分類を確定しています。これを重ねていけば辞書の精度が上がるため、今後はさらに省力化できるはずです。
そうしてグルーピングされたポジネガ分類を、時系列分析である「単語頻度推移」で可視化・スコア化し、景気動向などを可視化しています。スコア化の作業は私が担当していますが、これも解析結果のデータが蓄積されてくれば自動化できると考えています。
こうした解析プロセスは当社独自のもので、TMS にカスタマイズが必要となりましたが、それらをNTTデータ数理システムの方にご対応いただきました。そのおかげで、私たちがやりたい解析ができています。
TMS による解析結果には、営業トップの“肌感”が表れていた
営業レポートの解析に、どのくらいの時間をかけていますか。
下津 営業レポートは、世界中の拠点から毎月約1,000件上がってきます。その確認と分析を3名でひとつひとつ行っていたわけですが、必ずしも定量的かつ定期的にできていたわけではありませんでした。本文を約10分かけて内容を整理したと仮定して、166時間かかる見込みの作業が、TMS の導入により、4時間ほどの作業時間で行えるようになっています。
解析の結果は報告書などに活用されていると聞きました。
湯本 解析結果は私が報告書にまとめ、定期的に社内に情報共有しています。また、その他の解析結果の活用スキームもできつつあり、例えば、ポジネガ分類で多く上がってきた製品をピックアップして、担当営業の上長に報告し、必要に応じて直接、担当営業に詳細情報を提供する、といったことをしています。
そのほか、営業の管理職からデータ検証を求められたときなど、提出されている営業レポートの中から必要な情報を抜き出して報告できるようになりました。例えば、いま営業がどんなお客様を訪問しているのか、業種や会社名を抽出して分類することも TMS なら簡単です。
テキストマイニングに積極的に取り組まれている理由は何でしょうか。
下津 営業トップが、TMS解析の報告書の内容を認めてくれたことが大きいですね。営業役員は長年にわたる世界各地での営業経験やお客様との幅広いネットワークから、この業界の動静を知り尽くしています。その”肌感”と、TMS による解析結果がほぼマッチしたためです。テキストマイニングの有効性が営業役員によって裏打ちされたかたちです。
それから、社内の数値データの可視化を推進してきたことも理由の一つです。実績情報や生産状況など、一つ可視化できると、「次はこれを見たい」という要望が出てきます。それに応じて対応を繰り返したら、テキストの領域にも要望が広がりました。また前提として、CS(顧客満足度)向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を営業本部全体で目指していることもあります。
数値データと連係させた将来予測にトライしているそうですね。
下津 例えば、ポジネガ分類からある変化点が見えたとき、それに業界団体などの統計情報や、自社の営業・生産などの数値データと重ね合わせることで「この時点で確かに状況が変わっている」と判断できるはずです。そういう解析を繰り返して知見を蓄えれば、「テキストや数値のデータがこうなったら景況が上向く」といったターニングポイントや今後の動向の予測ができるはずです。そうなれば、各製品の売上予測など、より効率の高い生産計画の立案が可能となるでしょう。
さらに生成AI活用など、夢は広がる一方ですが、まずは目の前の課題や問題をひとつひとつクリアし、理想に近づいていきます。
おわりに
今回は、簡単な操作で本格的なテキストマイニングが行えるツール「Text Mining Studio(TMS)」を活用された事例についてご紹介しました。定期的に製品について紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。
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また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。