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- 結局AIって何?見直したいAIの定義【AI を斬る】
- 【AIを斬る】第1回:結局AIって何?見直したいAIの定義
- 【AIを斬る】第2回:計算機と計算機科学
こんにちは。シミュレーション&マイニング部の豊岡と申します。 自分は入社以来シミュレーション・数理最適化等様々な技術を扱っており、多様な分野で数理科学を活用した問題解決に携わってきました。
今回は少々大きなテーマになるのですが、これまで経験してきた業務の総括の意味も込めて、
AIとはなにか?
について考えたいと思います。
- "AI" について漠然としたイメージしか持てていない
- 「機械学習」などとの違いが難しく感じる
という方の役に立つよう、"AI" という言葉を掘り下げていきますのでよろしくお願いいたします。
AI の色々
読者の皆様は "AI" と聞くと何をイメージするでしょうか?
近年は OpenAI の ChatGPT や Google の Gemini のような、自然言語や画像を扱うことのできる「大規模な機械学習モデル」の活躍が目覚ましく、これらを思い浮かべる方が多いかもしれません。
将棋や囲碁をプレイする、強化学習モデルや探索アルゴリズムから成る「ゲームAI」のことを連想する方もまだまだ多いでしょうか。
一方で、数理最適化やシミュレーションなど、個別の問題を解決するための手法に対して AI という言葉が使われることもあります。
AIを活用した、と言うので話を聞いてみたら内容はトラックの配送経路最適化であったり、工場の製造ラインシミュレーションのことでした。ということがしばしばあるわけです。
元来、"AI" という用語は「人の知覚・知能を模した機能」のような意味合いであり、探索・推論アルゴリズムのような基礎研究に端を発するものでしたが、昨今の計算機技術の発展によってより広い意味で使われることが増えたように感じます。
個人的にも、"AI" と聞いたときには、具体的にどのような技術を指しているのか注意するように心がけています。
専門家からみたAI
世の中には「AIの研究者」という人はあまり多くないです。それよりも多いのは個別技術である、機械学習の研究者や数理最適化の研究者です。
(もちろん、元来の意味でのAIの研究者や、機械学習や最適化などの諸技術を統合して世の中の役に立つことを目指す研究者もいます。そうした人はまさに「AIの研究者」と言えるでしょう。)
外から見るとひとくくりで「AIの専門家」のように見えるかもしれませんが、個別技術XXの専門家からすると「自分はあくまでXXの専門家であってAIの専門家ではない」と認識されているはずです。
ただし、個別技術の専門家であっても、分かりやすさのために非専門家にむけて自身の研究のことを "AI" と称することはありえます。あるいは役に立ちそうな印象を持たせるためにあえて "AI" という曖昧な呼称を用いる人もいるかもしれません(あまり良くない例ですが)。
こうした用語自体の便利さもあいまって "AI" という言葉が色々な使われ方をすることが加速しているように感じます。
個人的には、このような使い方は避けており、極力個々の技術名称を使うように心がけています。
"AI" という言葉で技術を濁してしまうと、フンワリと役に立ちそうだ、と誤解を与え、過度な期待を持たせてしまう危険性があるからです。
数理システムでも "AI" という用語は使っています。しかし次のページのように、必ず具体的な技術要素を伴って説明されています:
AIソリューション/AIシステム開発
AI の定義
上述のように、色々な意味で使われることが常態化した現在においては、言葉の定義を見直す必要があるように感じます。 そこで、本記事では以下のような定義をしたいと思います:
AI の定義:
計算機および計算機科学を活用することで実現できる諸機能のうちのどれかひとつ。あるいは、諸機能を統合して実現できる機能。
...「計算機科学」という言葉が出てきていますが、これは計算機を単なる自動化ツールではなく、積極的に計算・演算処理を行って結論を導くためのツールとして使う、という意図を込めています。
それにしても曖昧ですね!しかしこれが実態にあった、かつ実用的な定義だと思っています。
例として、この定義に沿って世の中でよく見かける "AI" を含む文章を翻訳してみましょう。
- (自治体や企業などの)「AI活用推進室」
→ 「計算機科学を活用して世の中を良くする取り込みをする人たち」 - 「AIシンポジウム」
→ 「計算機科学の活用方法について考える会」 - (上司から) 「AI使ってなにか新しいことやってよ~」
→ 「計算機科学を活用した新しい取り組みを考えてほしい」
いかがでしょうか。
フンワリと "AI" で止まってしまうと、「なんとなく流行りに乗っておこう(おきたい)」という印象がありますが、定義にもとづいて言い換えると、「具体的にどのような技術で」「何をやるべきか」にフォーカスしたくなりませんか? この「具体化」が現実の問題に適用するためには必要なんです!
つづく
今回は AI という用語に関しての概観をお話し、実用的な解釈のための定義を行いました。
次回は AI の中身たる個別技術に関しての理解を深めることで、それらの総称である AI の解像度を高めていきたいと思います。
どうぞご期待ください!
- 次の記事:【AIを斬る】第2回:計算機と計算機科学
S4 Simulation System の開発のほか、機械学習・シミュレーション・数理最適化を幅広く扱い、分野を横断した問題解決に取り組んでいる。
入社後に競技プログラミングをはじめ、PGBATTLE2023にて企業の部団体3位入賞。
著書: 「XAI(説明可能なAI)──そのとき人工知能はどう考えたのか?」リックテレコム
趣味: 合唱