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Profile:村木 優一 教授
1999年京都薬科大学薬学部 生物薬学科卒業。同大学大学院修士課程修了後、三重大学医学部附属病院 薬剤部入職。2010年三重大学大学院 医学系研究科博士課程修了。2017年、京都薬科大学薬学部 臨床薬剤疫学分野教授。日本医療薬学会指導薬剤師、日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師、日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師。日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師部門 認定審査委員、抗微生物薬適正使用推進検討委員会 委員等、幅広い活動も展開。
Profile:豕瀬 諒 助教
2014年近畿大学薬学部 医療薬学科卒業後、大阪市立大学医学部附属病院 薬剤部入職。2019年京都薬科大学 臨床薬剤疫学分野助手、2021年京都薬科大学 論文博士取得、同大学臨床薬剤疫学分野 助教。日本医療薬学会 医療薬学専門薬剤師・医療薬学指導薬剤師・がん専門薬剤師。
京都薬科大学
医療薬科学系 臨床薬剤疫学分野
村木 優一 教授
京都薬科大学
医療薬科学系 臨床薬剤疫学分野
豕瀬 諒 助教
医薬品や薬剤師が社会にもたらす影響を医療ビッグデータで明らかにする
医療ビッグデータを使った研究を進めているそうですね。
村木 臨床の現場で集められている医療ビッグデータを用いて、薬学や疫学の観点から可視化を行い、その情報をエビデンスとしてまとめています。医薬品の使用状況や、効果や副作用の評価のほか、薬剤師をはじめとする医療従事者の関わりが治療にどのように貢献しているかといったテーマに取り組んでいます。研究例としては、世界的に問題となっている薬剤耐性菌の出現に関して、原因の1つとなる抗菌薬の使用状況をさまざまな角度から調べ、世界との比較や評価法の探索などを行っています。この結果は、厚生労働省によるAMR対策アクションプラン策定時の資料の1つとしても引用されています。
豕瀬 学生時代から継続して、米国や日本の有害事象自発報告データベースを用いて、医薬品による悪性腫瘍の発現や未知の有害事象を探索する研究を行ってきました。私自身の専門領域はがんのため、最近では大規模診療情報データを用いた抗がん剤の副作用などの調査・研究も行っています。データ解析にあたっては、以前からNTTデータ数理システムの各種ツールを利用しており、現在は Alkano も使っています。
Alkano は解析の筋道が分かりやすく、分析アイディアを試しやすい、と聞きました。
豕瀬 解析ツールとして以前から Visual R Platform を使っていましたが、それが Alkano に移行したため導入し、私のほか、10人程度の学生たちも活用しています。このツールは、データ加工・解析の筋道が分かりやすく視覚化される点が良いですね。どのデータを使ってどうマージをしたのか、それをどのように処理したのか、分析シナリオを見れば分かります。教員の立場からは解析方法の妥当性を把握しやすく、問題があればすぐにフィードバックできます。また、学生たちにとっては、どう解析するか、分析アイディアを自由に試してみることができます。今後、医療ビッグデータはさらに充実してきますから、それを扱う素養を身に付けるためにもぴったりのツールです。
Alkanoを用いたシグナル検出手法:JADERにおける胆嚢関連障害での場合
森脇茜、豕瀬諒、村木優一「医療ビッグデータを用いたトラマドールにおける未知の副作用の探索」(https://www.msi.co.jp/solution/stuaward/2022/Alkano_2.pdf )より
ノーコードで解析できる点も評価されていらっしゃいますね。
豕瀬 一般的な統計解析ツールは、R や Python などのコードを書くことが求められますが、学生にとってはそれがハードルとなっていました。我々は薬学の専門家ではありますが、統計学や情報処理学の専門家ではないため、作業をサポートしてくれる Alkano のようなツールは欠かせません。
沢田 私はフリーの統計解析ツールも使用したことがありますが、やはりノーコードで解析できる点はありがたいです。見やすく整理された画面上にアイコンを置くだけで思ったようなデータ加工や処理ができます。また、さらに高度な分析を行う場合には、R を習得してコードを組めば、それを分析シナリオのRスクリプトアイコンに入れれば実行できます。Alkano は、勉強を始めたばかりの学部生や大学院生でも簡単に使い始められますし、さらに自身のスキルを高めることで研究のスペシャリストになっても使い続けられる拡張性の高いツールだと思っています。
後藤 Alkano はツール全体が見やすく分かりやすいです。画面上にアイコンが整列し、全体を一望できますし、細かいところまで作り込まれていると触っていて実感しています。機能も多数あり、今後さまざまな研究テーマに活かしたいと考えています。
2022年度生
薬学専攻博士課程(社会人)
沢田 佳祐さん
2021年度生
薬学専攻博士課程
後藤 良太さん
Alkano による解析効率化でディスカッション時間が増えた
Alkano導入で“ディスカッションの時間が増えた”と伺いました。
沢田 私たちは研究者として、解析によって得られた結果を他の研究者とともにどのように解釈していくかディスカッションすることに時間を使いたいと常々思っています。そういう時間を増やしてくれることが、Alkano導入の意義の1つだといえます。先日、医療行為の因果関係を調べるため、Alkano を用いて決定木(デシジョンツリー)解析を行いましたが、30分程度で結果が得られました。自分で R のスクリプトを組んだら1日はかかっていたはずです。解析の作業時間を短縮できたことで、ディスカッションに十分時間を割くことができ、とても有意義でした。
後藤 研究を進める上では、実際に行った解析のプロセスを確認する作業が必須です。一般的なソフトではコマンドの記録となるため、解析プロセスの共有が困難ですが、Alkano では解析プロセスがマッピングされるため、共有しやすいといった利点があります。これにより、手順や操作の確認作業が短縮でき、中身のディスカッションに重点をおくことができます。
豕瀬 我々は薬学の専門家としてデータを見ますが、同様に他の分野の専門家がそれぞれの目線で必要なディスカッションを尽くすことが、研究の進展に大切です。もし Alkano がなかったら、解析やその結果をまとめることに時間をとられて、本来の研究がなかなか進まなかったかもしれません。
今後、この分野の研究をどのように進展させたいとお考えですか。
村木 薬剤師はチーム医療やかかりつけ薬剤師など、医療の現場で他の医療従事者とともに治療の成績向上に奮闘しており、その役割や成果はもっと評価されてもいい職種だと思っています。一方で医療ビッグデータは着々と整備されており、新型コロナウイルス感染症対策でもデータ活用の意義や価値が認められています。私達は医療ビッグデータを活用することで、医薬品の効果や副作用の評価はもちろん、薬剤師をはじめとする医療従事者の評価や成果を示し、日本における医療の提供体制や保健医療制度の有用性を世界に発信したいと考えています。
まだまだ新しい分野で、研究手法や利活用法なども確立の途上です。ただ、データドリブンによる発想や実行が世の中の当たり前となっている今、薬学や医療分野でも同様に確立できると思っています。今後、電子処方箋やマイナンバーの活用など、医療DXはますます加速していきます。私は、Alkano のような最新ツールを活用しながら、教員や大学院生、学生たちとともに成果を積み重ね、この新しい学問分野の未来を拓きたいと思っています。
おわりに
今回は、「Alkano」を活用していただいた事例についてご紹介しました。データ分析を活用した課題解決について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?Alkano を紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。
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