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- 統計解析・シミュレーションによる運輸・運送会社の評価賃金制度策定事例
Visual R Platform によって次のビジネスが見えてきた
2020年11月30日 15:00
業界特有の労働条件や制度が多く残る運輸業界に対し、最新の法律に則った労務管理や賃金制度を提案しているグローアップ社会保険労務士法人様。データ量が膨大で複雑な賃金体系の分析に Visual R Platform(以下VRP)を導入し、大きな効果や新たな展望を見出している。その状況を同法人の山下様と本多様、そして VRP の導入を提案したベリタップ・コンサルティング株式会社の大家様にうかがった。
2013年法人設立。労働保険・社会保険等の手続き業務、労務管理、労務トラブル相談といった社会保険労務士としての一般的な業務のほか、トラックやタクシーなど運輸業界専門の特定社会保険労務士を擁し、賃金制度の改定をはじめ運輸業界向け就業規則の作成や労使協定の作成、労働基準監督署対応、労務監査などを行っている。
Excel の限界が、ビジネスの発展を抑えていた
運輸業界(トラック運送会社・タクシー会社等)に対し 賃金制度の提案をされているそうですね。
山下 運輸業界の賃金体系は、以前から売上をもとにした歩合制が主流ですが、今の法令を遵守するためには、時間を軸とした賃金計算が必要となります。労働基準法では、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超える時間外労働に対しては割増賃金を支払わないといけないという規定があります。しかしながら、売上を元に算出した賃金体系では、割増賃金の正しい計算が行われず、未払いとなっているなどの問題が起き、労使間の紛争の原因になっています。私たちは社会保険労務士の業務のひとつとして、法律に則った新しい賃金制度をトラック・タクシーなどの運輸業界の会社様にご提案しています。
本多 労務形態や賃金体系は、会社によってさまざまで、以前からの慣行による独自ルールも多く存在します。また乗務員さんにも短時間に多く売上げる方がいる一方、そうでない方もいるのが現状です。法律に則った賃金制度に改定したために会社の利益が減る、乗務員さんの賃金が減るということは許されません。会社はもちろん、すべての乗務員さんに公平で全員が納得できる説得力のある数値や理論に基づいた賃金制度の案をお出しする必要があります。
制度策定にあたって、どのような分析を行っているのでしょうか。
本多 一人ひとりの乗務員さんについて、日ごとの勤務時間と賃金のデータをいただきその実態を把握します。その上で法律と照らし合わせた残業時間や深夜労働のデータ等を人ごとに集計し、その人の労働時間と現行の賃金体系の関係性を探ります。疑問点や問題点があればインタビューを行うなどして、労働時間と残業時間などの規定をどう切り分ければ、支払う賃金に相当するだけの法律的な整合性が得られるかシミュレーションします。その作業をすべての乗務員さんについて行い、全体としての最適解を導き出します。
山下 この作業はこれまで本多が Excel により、データ組み替えから計算式の入力まで手作業で行っていました。従って新しい賃金制度のご提案に時間がかかり、データがある程度整っているなどの条件の良い会社で約半年、場合によっては2〜3年に及ぶこともありました。乗務員さんを数百人抱えている大きな会社になるとデータ量も膨大になり、Excel を立ち上げるまでに数分待たされることもありました。また分析作業が本多一人に集中するという属人化も問題でした。これらをベリタップ・コンサルティングの大家さんに相談したところ、新たな分析ツールとして VRP を紹介いただきました。
VRP を紹介された理由をお聞かせください。
大家 これは Excel というツールの限界だと、お話をうかがってすぐに感じました。Excel の限界で貴重な時間が浪費され、仕事量も制限され、業績が頭打ちになっている。この状況を変えるには新しいツールを導入する必要があるでしょうと。分析ツールはNTTデータ数理システムから目的に応じて各種リリースされており、今回の作業に適したツールを数理システムのセールスに相談したりしながら、最終的に VRP を山下様にご提案しました。
大手IT企業の要職を歴任した木村裕之氏と大家万明氏により2015年設立。ネットワークをはじめプラットフォーム、セキュリティなど IT に関する豊富な知識と経験、人脈をもとに顧客・市場開拓、マーケティング・セールス戦略、経営戦略、IT技術支援など幅広い領域でコンサルティングを展開している。大家氏は電気通信大学 客員教授、特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構(RobiZy)顧問も務めている。
労務にはじまり、経営全体を見わたす分析へ
VRP の使い勝手はいかがでしょうか。
本多 導入時、NTTデータ数理システムの技術担当者から VRP によるデータ分析のレクチャーがありました。分析に使うデータを移行したり、労働時間や賃金など必要なデータをどう入れるかなどの基本的な操作はそこで習得できました。私自身、R の経験があるので違和感はありませんでした。特に R の経験がなくても使えると思いますが、R の知識があると応用ができ分析の幅が広がります。どのデータでどのような分析を行うか、ドラッグ&ドロップ操作で簡単にフローを組み立てることができ、Excel のときのような計算式の手入力からは解放されました。分析の作業効率も高まったと思います。また、グラフ化の機能が便利で活用しています。お客様のご要望で分析結果をさまざまな角度でグラフ化することもあるのですが、Excel で1枚ずつ作っていたようなビジュアルが VRP ならワンクリックで、しかもプレゼンテーションの場でもすぐにお見せすることができ、分析結果にご納得いただくのにとても役立っています。
VRP の評価や今後の展望をお聞かせください。
大家 グローアップ様の分析能力が飛躍的に拡大したはずです。これまで Excel で何十社も業界のデータを参照しようとしたら、最悪の場合動かなくなるので、すべて手作業でデータをつなぎ直す必要がありました。VRP であればそれが容易にできる、つまり業界全体を一望できるわけです。そのデータを見て、会社ごとに問題点を洗い出すなどして、新たなコンサルティングの展開も可能です。分析作業の効率化により時間的な余裕も生まれますので、その時間をサービス拡充に当てることもできます。
山下 VRP によって、私たちの法人に新しい分析のためのプラットフォームができたと思っています。分析作業に必要なフローを VRP に蓄積しておけば社内で共有し、本多と同じような分析が他のスタッフでも容易にできるようになります。全体としての分析能力が高まったので、今後はより多くの会社様からのご要望にお応えできると期待しています。また、良いツールをご紹介くださった大家さんに感謝しています。年次有給休暇取得など労働関連の法改正がたびたび行われ、運輸業界でも対応が求められています。また、有料道路利用料や、タクシー会社ではクレジットカードなどのキャッシュレス決済やスマートフォンアプリ配車などへの対応により、手数料など経営を圧迫する要因も増えています。乗務員さんの労働環境を守りながら適切な経理管理によって利潤を生み出し、次世代に生き残る。そうした経営全体をサポートできるような分析や、それによるコンサルティングも VRP があれば可能でしょう。
おわりに
今回は、「Visual R Platform」を活用して分析作業を効率化した事例についてご紹介しました。
2021年10月に「Visual R Platform」の後継製品として、AI・データ分析を内製化できるデータ分析プラットフォーム「Alkano」をリリースしました。Alkano を紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。
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