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Profile:木村 寛 教授
1999年、秋田県立大学システム科学技術学部助手に就任。2003年、同学部助教授を経て、2015年から教授。主な研究テーマは、非線形計画問題の双対理論。共同研究として「意思決定最適化理論における不等式双対化法の開発」「集合値解析的ゲーム論を評価基準とした最適経営戦略均衡解の研究」「集合値解析的ゲーム論からの最適経営戦略均衡解の研究」など。日本数学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会、統計科学研究会、日本統計学会所属。
数理最適化の有用性を体験するには、専用のツールが必要
ご担当の授業や研究室について教えていただけますか。
木村 本学の経営システム工学科は、理系の経営学科としては東北地方唯一の存在として開学時から教育を行っています。その中で私は数理統計や数理最適化の授業を担当しているほか、研究室には3年生から大学院生まで11人が在籍しています。数学の知識やスキルを使って世の中の課題解決に役立てたい、イノベーションを起こしたいという意欲を持った学生が集まっており、私はそんな学生たちと最適化理論や統計に関する研究や論文発表を行っています。
Nuorium Optimizer 導入の経緯を教えてください。
木村 経営システムを研究する上で、数学の理論を学ぶことはもちろん、その実践方法を知っておくことも非常に大切だと考えています。しかし、講義では簡単な問題を解くことくらいしかできません。学生たちが社会に出たときに役立つ経験となるよう、実社会に存在する多くのデータや大きな問題に向き合い、そこから知見を得たり課題解決の糸口を探したりできるような、専用のツールが必要だと感じていました。
そうした考えのもと、数理最適化に関しては Nuorium Optimizer(当時はNUOPT)を本学に導入しました。10年以上前のことです。
現在、Nuorium Optimizer は研究室の学生たちが自由に使えるようにしてあり、これを使った研究で卒業論文や修士論文を執筆する学生もいます。ちなみに本学科では、2年次後期に必修として初歩的な数理最適化を学び、この数理最適化の内容に続く科目として3年次に最適化手法I, II があります。学生が研究室に配属されるときには簡単なモデリングができる状態です。
フリーのツールとの違いや機能的なメリットはいかがですか。
木村 まず驚いたのが、Nuorium Optimizer の処理スピードです。フリーのツールでは出力までに数十分、数時間とかかっていた計算が、ほぼ一瞬で終わりました。結果がすぐに出ると、その場で検証できます。研究がはかどるだけでなく、出力結果を見ながら数式を改良して再出力するなどのトライも気軽にできます。それだけでもこのツールを導入して良かったと思ったほどです。
最適化計算にあたって数理モデルを入力する必要がありますが、Nuorium Optimizer には分かりやすいモデリング言語が付属していて、プログラミングしやすい点も助かっています。C++をベースとしたC++SIMPLEという言語のほか、Pythonベース、Rベースの各モデリング言語が付属しており、それを使うことで解を求めることができます。
さらに、Excelアドインという、Excelシート上のデータをマウス操作で簡単に登録できる機能も役立っています。どのデータを使ってどの最適化モデルで計算するか、変数や目的関数などを確認しながら計算を進め、結果の取り込みまで容易に行えます。
スピード、機能、サポートが、学生たちの研究意欲を高めてくれる
NTTデータ数理システムのサポートを大変ご評価くださっています。
木村 数理最適化で解を得るための数理モデルを作ることはできるのですが、それを Nuorium Optimizer に実装する際、技術的に悩むことがあります。そんなときNTTデータ数理システムのサポートに問い合わせると、すぐに答えが返ってきます。それも実装方法だけでなく、我々が作った数理モデル全体を理解した上で、可能な範囲内でより適切な数式の提案までしてくれたりします。欲しい答えの一歩先となる改善点まで教えてもらっているわけで、それは計算結果や、ひいては研究の精度にも関わることです。このように適切な回答がすぐに得られることは、このツールを使う上での大きな安心感となっており、フリーツールとは決定的に違う点です。
我々は秋田におりますが、東京のNTTデータ数理システムの技術者からリモートで直接、学生が知識や使い方を教えてもらえることは教育的にも貴重な体験だと思っています。
サポートが学生たちのモチベーションを刺激しているようですね。
木村 分からないことに対してとことん悩む、それは学生にとって良いことだと私は思っています。ただし悩んでばかりではなく、最終的に解決して何らかの結果を得ることが次の成長に欠かせません。その点でNTTデータ数理システムが示してくれる解決策は、学生たちにとって「やっぱりこれで良かった」「こうするともっと良くなるのか」といった自信や気づき、感動につながっています。そういった経験がモチベーションとなり自分の研究を最後までやり遂げ、新たな領域の研究を始めるなど学生たちの次の活動につながっています。
Nuorium Optimizer を活用して学生とともに行った研究を教えてください。
木村 最近のものとしては、昨今のテレワークを考慮した勤務スケジューリングの最適化があります。オフィスと自宅のハイブリッドで働く人の仕事の効率や通勤費などのコストを勘案した上で、勤務スケジュールの最適化を目指しました。働き方改革やワーク・ライフ・バランスが注目されている中、これから社会に出ていく学生たちにとって興味を持って研究できたようです。
また、地元企業との共同研究も行っており、メーカー様との生産スケジューリングに関する研究があります。生産工程は素材の仕入れから加工、完成、納品まで複雑に入り組んでおり、現場ではそれらをすり合わせて納期や生産計画を練り上げるのですが、これに大変な労力がかかるのです。その工程の数理モデルを我々が作り、企業担当者様とミーティングを重ねながら最適化の方法を探っています。これまでにない生産スケジューリングの手法として企業様から興味を持っていただき、研究が進んでいます。
また、金融関連企業への就職を希望する学生が株式投資の最適化を研究するなど、自分で興味あるテーマを探してきて研究を進める学生もいます。
地域の課題解決に数理最適化を役立てたいそうですね。
木村 高齢化による人手不足の中で企業はいかに利益を上げていくか、また限りある資源をいかに有効に使うかなど、いま社会や企業は多様で複雑な問題を抱えています。それらの課題を解決するひとつの手法として、数理最適化をはじめとする数学的なアプローチはますます必要となるでしょう。学生たちが Nuorium Optimizer を通して経験した数理最適化の有用性や実効性は、今後社会に出てから役立つはずです。
また本学は県立大学として、秋田県の持続的発展に貢献することを建学の精神として掲げています。次世代を担う人材を育てながら、地域にも寄与すること。いま学生たちと進めている地元企業様との共同研究もそのひとつですが、そういった活動を今後も重ね、この地域が抱えている課題の解決や発展に役立っていきたいと考えています。
おわりに
今回は、数理計画のためのモデリング言語、多様な求解アルゴリズム、及びGUI開発環境を備えた汎用数理計画法パッケージ「Nuorium Optimizer(NUOPT)」を活用していただいた事例についてご紹介しました。数理計画・最適化を活用した課題解決や Nuorium Optimizer について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、Nuorium Optimizer のページ、最適化の事例や技術概要については数理計画・最適化のページをご覧ください。
また、数理最適化の簡単な導入から始まり、弊社の数理最適化ソリューションのご紹介や数理最適化パッケージ Nuorium Optimizer のご紹介までをコンパクトにまとめた、オンライン形式のセミナーも定期的に行っております。詳しくはこちらをご覧ください。
Nuorium Optimizerにはアカデミックライセンスをご用意しております。
研究向け、研究室・講義向けなど、要件に合わせてお見積もりいたしますので、お気軽にご相談ください。