株式会社マンダム 様 統計解析による安全性試験の暗黙知の定量化、試験効率向上事例

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安全性・微生物評価の可能性が Alkano で広がった

2023年1月27日 16:28

化粧品や香水で数々のヒット商品を生み出してきた株式会社マンダム様。その開発過程で行う評価試験で、Rユーザ向け分析プラットフォーム「Visual R Platform(以下、 VRP)」を導入し、評価試験の精度向上やそれによる験期間の短縮、コスト削減などの成果をあげてきた。さらに、VRP後継であるノーコードデータ分析プラットフォーム 「Alkano(アルカノ)」に移行。データ前処理から分析まで、一段と容易になった操作性で、データ利活用の次の展開を目指している。

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Profile:株式会社マンダム 様
1927年設立。1933年「丹頂チック」、1970年「マンダムシリーズ」、1978年「ギャツビー」、2011年「ビフェスタ」などヒット商品を次々と発売。髪、顔、肌、化粧、衛生に関する多数の商品を製造、販売。日本だけでなく、インドネシアなど海外でも幅広く展開。2021年には新VIを策定。新しいシンボルマークは、マンダムの理念の根幹である「人間系」、すべてのステークホルダーの「笑顔」、マンダムの頭文字の「M」を表現している。本社・大阪市中央区、従業員数643名(連結 2,763名、2022年3月31日現在)。
製品評価研究所
安全性・微生物評価室 主任
武藤 謙 様
製品評価研究所
安全性・微生物評価室 主任
藤本 俊樹 様

製品の安心・安全を年間千に及ぶ評価試験で実証する

製品評価研究所での研究内容を教えてください。

武藤 化粧品は最後まで安全に安心して使えるよう設計する必要があります。原料や設計部門が開発した製品(処方)に対して、その安全・安心を評価・保証するのが製品評価研究所です。その中で我々安全性・微生物評価室では、主に細菌類やカビ類、酵母などに対する製品の防腐性や人肌に対する安全性の評価を行っています。
化粧品はワックスのように使う際に人の手が直接触れるものもあれば、ボトル製品のように完全に密閉されていないものもあります。そのため、微生物が化粧品本体に混入し、劣化や腐敗の原因となる可能性があります。それを防ぐために、防腐成分を配合した処方で評価試験を行い、この製品にはこの防腐成分を、この分量配合すべきという検証・設計を行うのが我々の役割です。

評価試験はどのように行っているのでしょうか。

武藤 微生物が製品に混入することを想定し、製品に微生物を添加した後、微生物の減少量と速度をウォッチングします。そのデータを目標基準に照らし合わせて判定するというのが基本的な流れです。防腐成分の配合量は単純に増やせば良いということではなく、生活者[1]に刺激とならず、かつ製品本来の特性や使用感を損なわない、最適な防腐成分と量を探し当てることが重要です。しかし化粧品は多数の原料が複雑に入り組んでいて、その中には防腐成分の効果を変化させてしまうものもあるので、結果の予測、ひいては防腐処方設計が困難になることがあります。

藤本 具体的な進め方として、まず1つの製品に対して防腐成分の組み合わせパターンを複数作ります。そして防腐成分ごとに分量を細かく変えて、何通りかの評価試験を行い、その中で防腐成分が最少で、目標基準をクリアした組み合わせを最終的な防腐処方設計として提案します。
扱うデータは主に製品への各原料配合量と、時間に伴う微生物の減少傾向の数値なのでシンプルです。しかし、評価試験は特別な理由がない限り、考えた処方のすべてに対して行うので、データ取得の対象は年間千件近くに及びます。
私はこの部署に配属されてからまだ日が浅いので、経験ある武藤の知見や解決策を共有してもらいながら評価試験を進めています。

  • マンダムの定義する消費者。

VRP導入の理由と、導入後の利用方法を教えてください。

武藤 先述の通り、化粧品の防腐性は多数の原料が複雑に影響し合っており、完全なマニュアル化は困難です。そのため、どのような条件のときにどの組み合わせが効果的かは、経験則に基づく判断が行われてきました。暗黙知のようなものですね。私はそうした状況を変えたくて、誰もが客観的に評価可能な分析ツールとして VRP の導入を会社に提案しました。これまでの経験による効果やその程度を数値化できると考えたのです。
VRP は、主に各防腐成分の予測効果を回帰分析により数値化するために使いました。防腐成分の評価試験データを学習用と予測用の2つに分割し、学習用データを分析し、その結果に予測データを当てはめて予測数値を出すモデルを作り、稼働させました。2018年のことです。モデル作成にはNTTデータ数理システムのサポートを受け、結果の評価方法なども学びました。

VRP導入のメリット、コスト削減につながったポイントは何でしょうか。

武藤 VRP による分析で、既知の防腐成分の効果を客観的に数値化できました。防腐処方設計にあたって、目標基準はクリアできるはずだという我々の経験則に加え、VRP で分析した統計モデルからの予測データにより二重の信頼が得られたわけです。暗黙知を形式知に近づけることができたともいえます。評価そのものの精度が高くなったので、予測データの確認のみで、行うべき評価試験の取捨選択ができ、試験数を削減できるようになりました。同じ防腐成分の組み合わせでも、配合量を変えて複数の処方を作り試験していましたが、試験数を減らせることで、サンプル作成の手間やコストが抑えられ、評価試験全体のコスト削減、さらに開発期間の短縮などにつながっています。

VRP から Alkano へ、2週間で移行完了

Alkano に移行されましたが、移行作業はとてもスムーズだったそうですね。

武藤 VRP でデータ分析の価値を実感し、「このデータでこういう分析ができないか」とアイデアが浮かぶようになりました。ちょうどそのタイミングで Alkano を紹介されました。VRP と同じ分析がWebブラウザ上で、自然なナビゲーションにより構築できると聞き驚きましたね。それまで Excel で行っていたデータ前処理の工程をアイコンで行える点も私には魅力的で、それらのことからすぐに移行を決めました。移行の作業はこのシステムにはまだ不慣れな藤本に頼んだのですが、データ移行からモデル構築、稼働開始まで、2週間ほどで作業を完了してしまいました。移行作業の簡便さは素晴らしかったです。

藤本 VRP上で動かしていたモデルをそのまま Alkano で再現しました。作業にあたって VRP でのデータ処理手順などを武藤から説明を受け、それを Alkano に組み上げていきました。途中、私だけでは解決できない問題があったのでNTTデータ数理システムとリモート会議を持ちましたが、移行期間中のサポート依頼はその1回だけで済みました。
私はプログラムの経験はなく当初は不安があったのですが、見やすい GUI と分かりやすいヘルプですぐに操作できました。このアイコンは何だろうとマウスオーバーすると、すぐにヘルプが出てきて教えてくれますし、設定を間違ってもすぐに戻せます。トライアンドエラーがいろいろできて、このツールに対する理解が進み、データ分析に対する興味や意欲もさらに湧いてきました。

今後 Alkano をどのように活用されるご予定でしょうか。

武藤 データ分析すべき数値データは、まだまだたくさんあります。例えば私の部署でも、各化粧品成分がどれくらい肌に刺激があるかを調べたデータが莫大にあります。これなども分析することで新しい知見が見えてくるのではという期待があります。Alkano に移行してさらに思うような分析ができるようになり、利用可能な分析手法が増えたので、今後は応用の範囲をどんどん広げていきたいと思っています。
Alkano に関しては開発など他部署も興味を示しており、API による業務システム連携機能は生産部門からも問い合わせを受けています。

※ VRPは2021年9月Alkanoに移行しました。

おわりに

今回は、「Alkano」を活用していただいた事例についてご紹介しました。データ分析を活用した課題解決について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?Alkano を紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。

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弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。

監修:株式会社NTTデータ数理システム 機械学習、統計解析、数理計画、シミュレーションなどの数理科学を 背景とした技術を活用し、業種・テーマを問わず幅広く仕事をしています。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること
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