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Profile:株式会社明電舎 様 1897年創業、ものづくり企業として約120年の歴史を誇る。電力・エネルギー分野をはじめ、電鉄システム、水環境システム、産業向け機器、自動車試験装置、物流関連などの事業を幅広く展開。今回ご紹介したサービスは、電力・エネルギー分野の顧客向け。
ICT統括本部 開発部 IoT製品開発課 外田 脩 様(工学博士)
設備機器の好不調を、VMS によって明らかにする
今回開発されたサービスの概要を教えていただけますか。
当社事業のひとつとして発電・変電などの各種設備をご提供しています。それらお客様設備の稼働を当社カスタマーセンターで常時モニタリングしていますが、そこには運用中の電力や電流、温度、圧力、運転履歴などのデータが日々、大量に蓄積されています。それを IoT やデータ解析の技術を活用することで、より安全・安心・安定した運用のためのサービスができるのではないかと発想しました。設備の運用データを活用した健康診断のようなものです。開発は私が担当し、過去何十年分の膨大なデータと VMS を利用しました。具体的には次にご説明するように、運用評価、故障の予兆検知とその展開の3つがあります。
発電設備で収集している運転のログと警報ログの各種イベントを、VMS のバブルチャート機能で横軸に時系列をとり、ビジュアルに集計しました(図1) 。A というイベントは断続的に発生しており、何らかの対応が必要なことが分かります。また B のイベントは2008年にメンテナンス対応をしており、その後発生が見られないことから保守の効果を裏付けています。このように、設備の運用状況だけでなく、その痛み具合やメンテナンス状況なども見える化することができました。
図1 バブルの大きさで発生件数の多さがひと目で分かる
ある設備機器の運転開始から停止までの間に収集した、発電量や温度など各種計測データの相関関係を VMS でプロットしてみました。すると特定のデータの相関において設備の運転状況を見える化することができました(図2)。正常運転時と警報発令直前とではプロットによって描き出される状況が明らかに異なります。点検時などでこのような状況が示された場合、それは故障の予兆であることがひと目で分かります。
図2 正常日に比べて警報数日前は、項目Aと項目Bの相関が弱い
見える化2の予兆検知の分析手法を別の設備機器に応用した例です。予兆検知は、データ処理の流れを、アイコンをつなぎ合わせて作る VMS のビジュアルプログラミング環境によって構築しています。そのアイコンのつなぎ合わせを変えることで容易に他の設備機器にもあてはめることができました。この設備機器の場合、円弧状のプロットの動きが正常で、逆L字型になったときが要注意です(図3)。
図3 正常日と異なる挙動があったとき機器の異常が考えられる
お客様の評価はいかがですか。
どのサービスも特定のお客様との間で実証実験を行っているところですが、ご好評いただいています。各設備の挙動や状態がデータと紐付いてひと目でつかめるため、現場の方にお見せしたときも「あのときの機械の挙動はそういうことだったのか」と納得されることが多く、現場への導入意欲も高いと感じています。今、設備保守の現場では人手不足や技術継承など、多くの問題を抱えています。我々のこうしたサービスによってそれら問題の解決や、安全・安心・安定の運用につなげていきたいと考えています。
VMS の“作法”の理解が、開発の近道だった
これらサービスは、基本的にお一人で開発されたと聞きましたが。
はい、当部署に配属されて3日目に上長から VMS とデータを渡され、指示されました。もちろん私一人だけではなく、上長や先輩に相談したり指導を仰いだりしています。当初は、この3つのサービスを構築するまで1年程度かかると予想していたのですが、結果的に3か月程度で実現することができました。その原動力となったのが VMS であることは間違いありません。データ分析は分析にとりかかるまでのデータの前処理に手間がかかることが多いのですが、VMS ではそれがありません。例えば稼働日時のテーブルを作る際も、VMS であればデータをドラッグ&ドロップで投入するだけで、異なった形式の日時データも自動で整形して表示してくれます。前処理に時間や手間を取られない分、解析作業に専念できます。効率的な解析ルーチンで何度も何度も試行錯誤を繰り返すことができ、結果、納得いく見える化サービスを短期間で構築することができました。
VMS を使いこなす上で、工夫された点はありますか。
この部署に配属されてから VMS を使い始め、当初は自己流で使っていました。しかし次第に、このソフトウェアを使う“作法”のようなものがあるのでは、と思い至りました。使う上でのコツやノウハウを学ぶことで自分の狙った解析がもっと効率的にできるのではと思ったのです。そこで数理システムのセミナーに出席しました。講師の方の丁寧なレクチャーはもちろん、データ投入の仕方やマウスの動かし方などちょっとした操作方法までとても参考になりました。また、技術コンサルタントの方に自分の状況に即したアドバイスがもらえるセミナー後の個別相談会も利用し、VMS の使い方や分析の進め方を見直す良い機会になりました。そうしてこのソフトウェアをより深く使い込んでいくにつれ、その開発思想や作り込みのスタンスなども身をもって理解できるようになり、習熟にプラスとなっています。このプロセスを経たおかげで開発期間がぐっと短縮され、3か月という短期間での構築に結びつきました。
今後の展開について、聞かせていただけますか。
もっとよいサービスを作りたい。そのために、VMS の機能をもっと使いこなしたいです。VMS にはものすごく多数の機能がありますが、今回私が使ったのは、その中のほんのわずか。ということは、それら機能を使いこなすことでデータをシンプルに活かしたサービスや、さらに複雑に高度にデータを組み合わせた解析サービスなど、目的や方法に合わせていくらでも開発できそうです。そうした次のステップに向けての、今は出発点だと思っています。これから可能性をどんどん広げていきたいですし、VMS があればきっと実現できます。私は今、とてもワクワクしています。
おわりに
今回は、「Visual Mining Studio」を活用していただいた事例についてご紹介しました。データマイニングを活用した課題解決について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?
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