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- Nuorium Optimization Day 2025 開催報告
2025年7月28日に Nuorium Optimization Day 2025 を開催しました。
本イベントは数理最適化を軸にテーマを決めて毎年開催しているイベントです。 今年のテーマは「数理最適化によるリソースの有効活用と業務効率化」でした。
本記事ではイベントの開催について報告いたします。
イベント当日
当日の東京都内は猛暑日となり、朝から蒸し暑さが肌にまとわりつくような日でした。 本イベントは コモレ四谷 タワーコンファレンス の会議室を貸し切って実施されました。
当日のタイムテーブルは下記の通りです。
時間 | 内容 |
---|---|
9:30 | 開場 |
10:00 – 10:05 | 開会のご挨拶 |
10:05 – 10:20 | 数理最適化と本日の講演に関する概要説明 |
10:20 – 11:00 | 講演1 株式会社NTTデータ数理システム 多田 明功 |
11:10 – 12:00 | 講演2 株式会社NTTデータ数理システム 藤井 浩一 |
12:00 – 12:20 | ポスター紹介 |
12:20 – 14:00 | 昼休憩およびポスターセッション(Studio & Lounge) |
14:00 – 14:50 | 特別講演1 東京ガス株式会社 飯野 佑樹 様 |
15:00 – 15:50 | 特別講演2 鉄道情報システム株式会社 新井 祐一 様 |
15:50 – 15:55 | 閉会のご挨拶 |
16:00 – 17:30 | 懇親会 |
株式会社NTTデータ数理システム 多田 明功
「社会をデザインする意思決定への数理最適化の適用概要」
最初は株式会社NTTデータ数理システム 数理計画部 部長の多田明功による講演です。 多田明功は実社会における数理最適化の活用をビジネスとアカデミックの両面から広げることをミッションに掲げ、技術の社会実装と理論的深化の両立を目指しています。
多田による本講演では、数理最適化という技術が業務の効率化やコスト削減だけでなく、 将来の施策検討や社会課題の解決にも役立つことがさまざまな事例を交えて紹介されました。
物流ネットワークの再編やエネルギー問題、共同配送といった複雑なテーマに対しても数理最適化が力を発揮できることが示され、参加者が「未来をどう設計していくか」を考えるヒントになったのではないでしょうか。 特に、複数のシナリオをもとに比較・検討するマクロ視点でのシミュレーションは将来を見据えた意思決定の場面で非常に有効であることが印象的でした。
また、意思決定の流れを7つのステップに整理し、KPIの設定から施策選定までを体系的に捉える方法も紹介されました。 経営層・現場双方の視点を意識したこのアプローチは、参加者の皆さまがご自身の課題を広い視野でとらえ、単なる効率化にとどまらない活用の可能性を感じていただくきっかけになったように思います。
株式会社NTTデータ数理システム 藤井 浩一
「Nuorium Optimizer 複合展開および生成 AI の活用」
続いて、数理最適化パッケージ Nuorium Optimizer 開発チーム リーダーの藤井浩一から「Nuorium Optimizer 複合展開および生成 AI の活用」というタイトルで講演しました。 本講演では Nuorium Optimizer の最新バージョン V27 における注目機能と今後の展望について詳しく紹介しました。
特に注目だったのは、メタヒューリスティクス解法「WLS(Weighting Local Search)」の強化についてです。 今回のバージョンではWLSの並列化対応と連続変数への対応がさらに進化し、実際の適用事例や数値実験に基づき、WLSの実用性の高さが示されました。 さらに、次期バージョン(V28)に向けた開発ロードマップの中で「シンセシスソルバー機能(仮)」の構想が紹介されました。 これは、メタヒューリスティクスと厳密解法を融合させることで両者の長所を活かしたより高速な最適化計算を可能にする技術です。
もう一つの大きなトピックは数理最適化と生成AIの連携です。 「生成AIで数理最適化問題を扱うのは難しいのでは?」と感じる方も多いかもしれませんが、本講演では自然言語で記述された最適化問題からモデリング言語への自動変換を行い、最終的に Nuorium Optimizer で最適化計算までを実施する「Nuorium Modeling Agent(ベータ版)」が紹介されました。 モデリング支援や初期モデルの自動生成といった用途において、現実的で有効なアプローチとして期待が寄せられます。
今後Nuorium Optimizerはアルゴリズム面でもユーザビリティ面でもさらなる進化が期待されます。 数理最適化と生成AIの融合が業務の現場に新しい風を吹き込む日も近いのではないでしょうか。
東京ガス株式会社 飯野 佑樹 様
「現場で活きる数理最適化~東京ガス流DXの挑戦と未来~」
14 時からは東京ガス株式会社の飯野佑樹様から「現場で活きる数理最適化~東京ガス流DXの挑戦と未来~」というタイトルでご講演いただきました。 本ご講演では最初に、東京ガス様における数理最適化を含むオペレーションズリサーチの活用分野や DX 組織の体制をご紹介いただきました。 バリューチェーンと合わせて活用分野をご紹介いただき、数理最適化がとても広範囲に活用されていることが分かりました。
その後にはガス開栓業務差配の自動化についてご紹介いただきました。 ALNS という最適化手法を用いて作業者への案件への割付とルーティングを求める事例です。 飯野様からは業務内容や効果をご説明いただき、ALNS の説明やこの手法を選んだ理由などは弊社佐久間からご紹介しました。 具体的な内容についてご興味のある方は以下の記事をご覧ください。
最後に飯野様から数理最適化活用のステップとして実践的な内容をご紹介いただきました。 とても印象に残っているのは活用し始めの段階において「仲間を作る」という点です。 開発側と業務側を巻き込んだコアメンバを作成し、活用する際のメリットとパッションを伝えていくことが重要ということでした。 弊社はお客様向けにツールを開発する立場であり、「メリット」や「効果」でツール導入の可否をご判断いただく立場にありますが、 お客様がお持ちの「パッション」も大事にして一緒に DX を推進していきたい気持ちになりました。
鉄道情報システム株式会社 新井 祐一 様
「数理最適化技術を活用した勤務計画ソリューションの事例について」
15 時からは鉄道情報システム株式会社の新井祐一様より「数理最適化技術を活用した勤務計画ソリューションの事例について」というタイトルで講演いただきました。
本ご講演では、同社が手掛ける勤務計画ソリューション勤務シフト作成お助けマンのラインナップである三つのサービスをご紹介いただきました。
導入企業が420社を超える人気サービスである一方、その背景にはUI/UXにまで配慮された、きめ細やかな工夫が凝らされていることが講演の中で語られました。 これらのソリューションが着実に成長を遂げていること、さらには生成AIの活用などにより今後さらなる発展が期待されることも強く印象づけられる講演でした。
勤務シフトの作成にとどまらず、独立行政法人国際協力機構(JICA)様向けに提供された 応募選考のマッチング業務 ソリューションについてもご紹介がありました。 これまで数日かかっていた応募選考作業が、数理最適化の導入により大幅に効率化されたことが語られました。 「マッチング」を数理最適化の課題として捉えるビジネス視点はまだ一般的と言えませんが、今後このような応用事例が広がっていくことを感じさせる内容でした。
ポスター発表
当日は弊社からいくつかのポスターも発表いたしました。簡単にですがご紹介いたします。
株式会社NTTデータ数理システム 田中 大毅
「現場を変える最適化の新潮流~かつてない複雑な産業問題に挑む~」
材料設計や機械学習のパラメータ調整で用いられるブラックボックス最適化に関するポスターです。 数式が複雑すぎて表現できない場面で活躍する技術です。弊社ではブラックボックス最適化にも力を入れています。
株式会社NTTデータ数理システム 松岡 勇気
「実務で使える数理最適化の考え方 -基礎から学ぶモデリング- 刊行のご案内」
数理最適化による現実問題の解決を念頭に置いた書籍がオーム社より出版されます。 その書籍についてご紹介したポスターです。 他の専門書ではなかなか扱われない内容を含む、実務家向けの書籍です。ぜひお手に取ってみてください。 2025 年 11 月に刊行予定で、価格は本体価格 3,200 円の予定です。
株式会社NTTデータ数理システム 佐久間 寛人
「フィールド業務の課題と数理最適化 ユースケースを通して考える数理最適化の可能性」
保守点検を行うフィールドサービスや建築工程計画の立案に関するポスターです。 人的リソースやルーティングを含むような計画立案にお困りでしたら数理最適化の活用をご検討ください。
株式会社NTTデータ数理システム 保科 拓紀
「業務に潜む様々な数理最適化課題」
数理最適化が様々な業務に活用できることを伝えるポスターです。 本イベントで初めて数理最適化に触れるという方にご用意しました。
イベントを終えて
当日は懇親会も実施し、ご参加いただいた皆様にとても満足していただけたイベントになりました。 ご講演いただいた東京ガス株式会社 飯野様 と 鉄道情報システム株式会社 新井様 にはご多忙の中、快くご登壇いただきましたことに、心より感謝申し上げます。
今後もこのようなイベントを通じて数理最適化をご活用されている実務家や研究者、さらにはこれから活用されようとしている皆様との交流の場をご提供できたらと思います。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること