TOTO は商品カテゴリー別の事業部制をとり、商品企画から製造、生産管理まで各商品事業部が一貫して行っている。課題が各事業部に共通することも多く、テキストマイニングツールの導入にあたっては全社展開を見据えて選定。それにより商品開発、業務効率化、お客さま満足度向上といった課題解決の成果も全社に広がっている。
一番のポイントは全社展開のしやすさですね。選定にあたってはいくつかの製品やSaaS型のソフトを検討しました。Text Mining Studio は必要な機能が一通りそろっているし、分析結果がグラフィカルで見やすい。分析・解析のプロではない人でも操作しやすい。そうしたらほとんどの商品事業部から「うちでも使いたい」と言ってきたんです。部門ごとにソフトを購入すれば大変なコストアップですが、Text Mining Studio はクライアント・サーバー版があります。サーバーにソフトをインストールしておけば、遠方の拠点からもリモートログインして使える。これは大きなメリットだと思い、採用を決めました。
当社は数年前から、商品開発のフレームワークである QFD(品質機能展開:Quality Function Deployment)を全商品に適用しています。これはお客さまの声を実現するために必要な機能を、商品開発に取り入れていく手法。つまりお客さまの声を整備することが不可欠なんです。 開発者はこれまでもお客さまの声に耳を傾けてきましたが、開発者の感性に引っかかった声が優先的に商品に生かされる懸念がありました。しかしテキストマイニングで、より多面的な分析を、効率よく行えるようになりました。声がきちんと“見える化”されたことで QFD の妥当性も検証できるようになり、よりユーザー視点での商品開発が可能になりましたね。
もう一つの課題である問い合わせ削減活動では、テキストマイニングをどう生かしましたか。
当社には、お客さまや特約店からの問い合わせを受ける一次窓口と、一次窓口で解決できなかった問い合わせを受ける二次窓口があります。この二次窓口が、水まわり設備機器を商材とする4つの商品事業部に合計8部門あります。 二次窓口への問い合わせ内容は難易度で A ~ C の3つに分けられます。Aランクは関連部門への確認が必要で、二次窓口でも回答が困難。Bランクは一次窓口では回答困難。Cランクはホームページや印刷物に情報が開示されており、一次窓口でも回答可能。このCランクの問い合わせの割合が意外と高く、その削減を目指しました。 まず二次窓口8部門で入力した電話応対記録(ログ)から、Cランクの問い合わせをテキストマイニングしたんです。すると部品の品番を知りたいという問い合わせが大勢を占めている状況が判明しました。また、どの部品の品番で問い合わせが多いのかも特定できました。そこで各商品事業部は、品番が掲載されている社内ホームページの検索性を改善し、あわせて品番の調べ方を一次窓口に教育。その結果、活動開始時に26%もあったCランクの問い合わせ比率は11%に下がり、問い合わせ件数は約2,000件/月減少と、業務効率化が大きく進みました。
8部門の皆様が、最初からログ入力に協力的だったのでしょうか。
実は応答率が各部門の評価の一つとなることから、以前は「記録をとる時間があるなら電話をとれ」という雰囲気もありました。だけど最も重要なのは、問い合わせそのものを減らすこと。そうすれば自然と応答率も上がるし、何より一次窓口で即答できれば、お客さま満足度の向上につながります。こうした認識を8部門が共有できたことが大きかったですね。 Text Mining Studio 導入後、年1回開かれる全社CS大会で「お客さまの声の分析と活用による CS」をテーマに発表して社長賞を受賞したんです。活動が全社に知れわたることとなり、テキストマイニングの機運はさらに高まっていますよ。
テキストマイニングはあくまで手段であり、真の目的は課題解決。ですので、社内で Text Mining Studio を紹介するときは、部門の課題や要望をヒアリングし、それを解決する分析方法もあわせて提案するようにしていますね。最近では「うちのこの課題に使えるかも」と、利用部門でも活用のアイディアが湧くようになってきました。全社展開がスムーズにいくよう、Text Mining Studio のマニュアルやチュートリアル、辞書データ、社内外の活用事例など、有用な情報やデータはすべてネットワークドライブに入れ、全社で共有しているんですよ。 Text Mining Studio の利用を決めた社内ユーザーは、NTTデータ数理システムの無料体験セミナーに参加したり、付属のチュートリアルを使った社内研修で学びます。これらの結果、導入して約1年で11拠点・21部門まで利用が増えました。社内には未分析のテキストデータがまだまだあります。これからもNTTデータ数理システムのサポートを受けながら、テキストマイニングを課題形成や意思決定に欠かせない当たり前のツールにしていきたいですね。