AGC × NTTデータ数理システム ベイジアンネットワークによる化学プラントの品質・生産効率向上事例

  • HOME
  • ベイジアンネットワークによる化学プラントの品質・生産効率向上事例

データ分析は BayoLink から始まる

2020年6月 4日 19:04

経営や業務の改革でデータ活用に取り組んでいる企業が増えているが、AGC もそのひとつだ。データサイエンティストとして優れた実績を持つ小野義之様を外部から採用し、データ活用の全社的な環境整備を推進している。その状況や分析ツールとして活用している BayoLink について、小野様にうかがった。

Profile:AGC株式会社 様
1907(明治40)年創立。建築や自動車などのガラス、液晶用ガラスや光学フィルターなどの電子、塩化ビニール材料やフッ素樹脂などの化学品、セラミックスの4つの事業領域でグローバルに事業活動を展開。フロート板ガラスや自動車ガラスで、世界ナンバーワンの市場シェアを誇る(2017年、AGC調べ)。2018年7月1日、旭硝子株式会社からAGC株式会社に社名変更。

経営企画本部 スマートAGC推進グループ
マネージャー 小野 義之 様

入社早々、自社化学プラント業務をデータ分析、改善に結びつける

AGC でのお役目を教えてください。

当社では、グループ全体のデジタル化を推進する部署として経営企画本部に「スマートAGC推進グループ」を発足させ、データ活用による業務改善や新事業の提案などに力を入れています。私はこの部署が設立された日に入社し、配属されました。まったく新しい部署なので社内に存在をアピールするべく、まずは実績作り、データ活用の実例作りから始めています。

その一環で自社化学プラントの業務分析を行いました。このほか、データ分析を行う際の標準的な手順の確立や、分析のための人材育成なども行っています。こうしたことを通して、データ活用が容易に行える環境や人的リソースを社内に整備していくことも私の役割です。

(2019年現在、確立した標準手順には「因果連鎖分析」という名称がつけられ、2019年11月14日にAGC株式会社からニュースリリースが公表されています)

化学プラントの業務分析には BayoLink を使ったそうですね。

AGC には化学プラントがありますが、その業務について私は未経験でした。そこで、まず業務プロセスの把握とデータの存在確認のため、業務部門に対してヒアリングを行い、因果関係図にまとめました。

化学プラントは各工程で材料投入量という変数や運転パラメーター、さらに周辺環境といった条件があります。それらのデータを集め、因果関係を考慮しながら BayoLink に当てはめました。

プロセスは第1工程、第2工程と複数あり、それらを階層構造として、ベイジアンネットワークを構築します。さらに検査項目を出力値として構造を含め、データを当てはめて分析することで、プラント運転の最適条件を出すことができます。その結果から浮かび上がった気づきをもとに現場責任者と相談をして、化学プラントの運転方法を見直したところ、品質や生産効率の向上につながり、社内でも評価を得ることができました。

データ分析で重要なのは、どんな点でしょうか

何のためにデータ分析をするのかを考えることが大切です。例えば業務改善提案であれば、分析結果を現場スタッフに示し、動機づけをして、最終的に「よし業務を変えてみよう」という気持ちになってもらって初めて意義ある分析結果となります。

そのためにまず必要なのが、業務の把握と因果関係の可視化です。業務プロセス上で各部署や工程はどのように関係しているか、図に起こして現場スタッフに見てもらいます。そうすると大抵喜ばれます。実は、現場スタッフは自分の業務は知り尽くしていますが、それが他の業務とどのように関係しているか、全体像が見えていない場合が多い。そこに業務の因果関係の図を見せると、「ああ、こんなふうになっていたのだ」と興味を持ってもらえ、また、「この関係性に問題がありそうだ」という気づきも生まれてきたりします。BayoLink の出力はデータの持つ因果関係を視覚的に示しているので、後に分析結果を見せたときに「なるほど」と自然に受け入れられることが多いです。

こうしたステップを経ることで、データ分析で難しい説得のフェーズがスムーズに進みます。この進め方は汎用性が高く、冒頭の化学プラント業務はもちろん、マーケティングオートメーション、社内の人事(従業員のライフサイクル)など、さまざまに応用できます。

納得の結果が得られる、私にとって替えのきかない分析ツール

BayoLink の特徴や使い勝手はいかがでしょうか。

BayoLink なら因果関係を構造的、階層的に視覚化することができます。しかもその分析結果が私の経験上、非常にリーズナブルで納得しやすい。因果関係の階層構造というこのツールの特徴が人間の感性に合っているともいえるでしょう。

階層構造により、「複数に影響している因子はこれ」といった指摘が簡単にでき、また、「この因子は因果関係のパスを経由してここにも影響を与えている」といったことも分かります。因果の深さも、近い方が影響を与えやすいとか、階層的に深くなってくると結果に与える影響は小さくなる、といったことがビジュアルに違和感なくつかめます。それを現場スタッフと見るだけでも、問題はどこにありそうか、多くの気づきが得られ、ときには因果関係を出した時点で、すぐに解決策が見つかることもある。ですから私はよく、分析の初期段階でまず BayoLink による分析をしてみます。それだけで原因や分析の大まかな方向性を出すことができるからです。

さらに、どういう条件であればその問題は解決できるのか、例えば運転のパラメーターをどう設定すれば、化学プラントの製品品質が規定値で収まるかといったことを確率として出すこともできます。このように、BayoLink はデータ活用のプロセスの初期から有効に使え、非常に役立つ分析結果がスピーディに得られる。私にとっては替えのきかない分析技術です。

データ分析に関して、今後の展望やお考えをお願いします。

BayoLink のような最新のデータテクノロジーが使えるようになったことで、複雑な業務もデータで解き明かすことができるようになりました。それによってもう一段階の改善が可能となっています。AGCは素材産業であり、バリューチェーンの初期に位置します。私たちが作った製品はいくつかの企業の加工を経てお客様の手に渡っていきます。その間の各企業の業務プロセスを結合して分析できないだろうか、と私は考えています。いわば、企業をまたいだ最適化、バリューチェーン全体の改善です。これが実現できれば、お客様と多くの企業がWin-Winの関係になれるはずです。

こうしたことを通して、私は日本企業の未来のためにデータ活用を推進したいと考えています。その際も BayoLink が役立つと思っています。また数理システムはテキストマイニングツール「Text Mining Studio」や汎用データマイニングツール「Visual Mining Studio」をはじめ、優れた分析技術も持っています。それらを組み合わせることで、さらなるデータ活用も可能だと信じています。

(2019年5月~12月、AGC株式会社、滋賀大学河本教授、NTTデータ数理システムの三社共催という形で、「因果連鎖分析を用いた課題設定 勉強会(全7回)」を開催しました。大変好評だったため、2020年以降の開催も検討中です)

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLink(ベイヨリンク)」を活用していただいた事例についてご紹介しました。 ベイジアンネットワークを活用した課題解決や BayoLink について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、BayoLink のページをご覧ください。

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。