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Profile:株式会社レゾナック・ホールディングス 様
昭和電工株式会社と昭和電工マテリアルズ株式会社(旧日立化成株式会社)を統合し、2023年に持株会社として発足。資本金1,821億円、連結売上高1兆2,888億円(いずれも2023年12月31日現在)。事業会社である株式会社レゾナックでは、エレクトロニクス、モビリティ、機能材料、基礎化学品などの分野で事業を展開している。
カルチャーコミュニケーション部
カルチャーカルティベーショングループ
チーフ・アシスタントマネージャー
甲田 直也 様
施策の影響や効果を、ベイジアンネットワークで明らかにする
ご所属の「カルチャーコミュニケーション部」のミッションを教えてください。
甲田 当社は旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズの経営体制を統合し、新社名「レゾナック」のもと2023年1月に新スタートを切りました。この統合を「新たな創業」と位置付け、経営理念となるパーパス・バリューを策定。パーパス(存在意義)として「化学の力で社会を変える」を、そしてバリュー(私たちが大切にする価値観)として「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」など4項目を掲げました。このパーパスとバリューを会社全体に浸透させ、新たな企業文化を醸成することを目的に、CHRO(最高人事責任者)管掌のもとカルチャーコミュニケーション部が新設されました。この部署で私は理念浸透調査やエンゲージメント調査を担当しており、調査システム設計や実査によって得られたデータ解析を行っています。
経営理念の浸透状況をデータ解析で明らかにしたいとのご要望でした。
甲田 研修参加者へのアンケート調査などで集めたデータの解析方法で悩んでいました。研修の参加率や満足度と他の項目との相関分析は行っていましたが、それだけでは施策と効果の因果関係がつかめず、影響度の分析はできていませんでした。
人の行動には多くの因子が含まれ、1つの原因が複数の結果に影響したり、またその結果が多数の原因に影響を及ぼしたりします。私は研究開発部門でデータ解析の経験もあったので、そんな場合に Python などを用いれば、統計的因果推論、ベイジアンネットワークができることは知っていました。ただ、ここは人事部門なので文系のスタッフに対する配慮が必要です。また経営理念の浸透は長期的なテーマであり、調査やデータ解析のための標準的な環境をいまのうちに整えておきたいとの思いもありました。
そこで見つけたのが Alkano です。ベイジアンネットワークをはじめさまざまな解析機能が1つにまとまったツールで、しかもそれらがノーコードで行えるので、プログラムに慣れていない文系のスタッフでも容易に使えます。
導入にあたってAlkanoをトライアルしたそうですが、結果はいかがでしたか。
甲田 1か月ほどトライアルで使ってみました。エンゲージメント調査の結果からベイジアンネットワークを作成したところ、現在の施策が従業員の動向にどのように影響し、エンゲージメントにどう結びついているのか、その因果関係や効果がビジュアル化され、体系的に分かりやすく出てきました。実は、以前に Python で同じような解析をしたことがあり、LiNGAMでも似たような結果を得ることはできていました。ただ、Alkano でこんなに簡単に分かりやすい結果を出せるなら、ぜひ本格的に使いたい。そのように CHRO に報告したところ理解が得られ、導入となりました。
各種施策の効果がベイジアンネットワークで見えるそうですね。
甲田 エンゲージメント調査をベイジアンネットワーク分析した因果探索結果を図に示します。例えば「共創を生む企業文化づくり」の施策として「上司との対話」を実施したところ、「成長機会・キャリアへの期待」につながってエンゲージメントスコアを高め、継続勤務意向や総合的体験に結びつくことが明らかになりました。また「会社への信頼」があれば、「パーパスの自分ごと化」や「バリューの実践」へとつながっていくことも分かりました。解析結果を事業所や職種単位でグルーピングすると、それぞれの立場での従業員の動向が見えます。さらに全社を俯瞰するところまで広げると、エンゲージメントの動向を示す構造が浮かび上がります。当社はグループ全体で従業員が約24,600人、調査の回答率が88%なので約21,700人分の解析です。この結果を、切り口を変えるなどして確認すると、エンゲージメントスコアやパーパス・バリューの浸透に効く因子やその因果関係が分かります。他への影響が大きい要素やスコアが低い要素は要改善ポイントなので、改善につながる施策を新たに考えます。このように構造全体をつかめることで、相関分析のときよりも具体的な議論が、データを基にできるようになっています。
2024年度エンゲージメント調査の因果探索結果

社内で解析を行うメリットはどんな点にありますか。
甲田 アンケート結果の分析を、コンサルティング会社に依頼したことがあるのですが限界を感じました。当社は体制が大きく変わりましたが、その状況が外部からでは把握しにくかったからではと思っています。だとしたら、社内状況をよく知っている自分たちが解析してはどうか、というのが今回の動機のひとつです。問題意識を持ってデータ解析を行い、社員や部署の状況を加味しながら施策を立案する。それによって、より具体的で実効性の高い施策を打ち出せていると感じています。また、そうした施策展開は周囲の理解や協力を得やすく、結果にもつながっています。それを可能にしたのが Alkano によるベイジアンネットワーク解析です。社員単位から部署ごとまで、その動向や関係性の強さなどが表現されているから、状況把握が容易なだけでなく新たな気づきやアイデアも得られ、実効性の高い施策を企画できるのです。当初、今あるデータを使ってどこまで解析できるか不安がありましたが、期待以上の結果が出ています。
ストレスチェックなど解析で活かせるデータは社内にまだまだある
データの解析や活用が、社内の他部門にも広がっていると聞きました。
甲田 今回の解析結果を社内で発表したところ、大きな反響がありました。経営層からも評価され、機関投資家や有識者への説明機会に解析結果が取り上げられました。また経営層の勉強会の資料としても利用されています。
さらに社内の別の部署から「うちでこんな問題意識を持っている。その解決策をデータ解析で見つけたい」といった問い合わせもありました。我々のエンゲージメント調査の結果を付き合わせることで実効性の高い施策を展開したいと考えています。同様に従業員の健康維持・増進を目指す健康経営の観点から、ストレスとの関係性を探索する案件も始まっています。キャリアパス、サステナビリティマインド、品質管理に至るまで当社には多様な調査があり、それぞれでデータが膨大に蓄積されているので、さまざまに解析できそうです。このように、人事部門でもデータ解析が求められることが多くなっています。Alkano であればノーコードで狙った解析が容易にできるので、今後は他のスタッフにもどんどん業務に活用してほしいと思っています。
チャレンジはまだまだ続きそうですね。
甲田 Alkano には TextExtension という拡張機能があり、それを使うことで高度な前処理によるテキストマイニングが可能になると聞いています。エンゲージメント調査には自由記述もあるので、それを深掘りすることで新たな気づきや次の施策展開につなげたいと考えています。そのほか施策展開のための予測モデル構築に役立ちそうな解析機能もあるので、どんどん活用していきたいです。
業務に関しては、いま手掛けている調査・解析はもちろんですが、先ほどあげた他部署との連携も実現したいと考えています。ストレスチェックなどの健康経営に関するサーベイを皮切りに、こうした活動をひとつひとつ着実に結果につなげていきたい。そうすることで、次にチャレンジすべきことがまた新たに見つかると思っています。
おわりに
今回は、「Alkano」を活用していただいた事例についてご紹介しました。データ分析を活用した課題解決について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?Alkano を紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。
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