NTTデータ数理システム新卒採用試験<数学>問題紹介 第一回 ~整数問題~

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※試験の設定は2022年度時点の情報であり、2023年度以降は変更の可能性があります。試験内容についてはエントリーされた方にお送りする情報をご確認ください。

こんにちは、数理計画部の田中です。2021年度まで筆記試験の作問担当を務めていました。今回から全3回にわたり、当社の新卒採用で実施している数学の筆記試験問題を紹介したいと思います。

入社試験問題例

当社の新卒採用では、数学と英語の筆記試験を受験してもらっています。 筆記試験の数学は 6 問中 2 問選択となっており、6 問の中に少なくとも 2 問以上は高校数学の範囲で解ける問題が含まれていることから、大学で数学を学んでいない学生さんでも解答できるように考えています。高校数学の範囲の問題としては初等整数論の問題がよく出題されています。今回は私が作成した2021年度の問題を紹介したいと思います。

問題. 二つの整数 $x, y$ を用いて

[[p = x^3 + y^3]]

と表される100以下の正の素数を全て求めよ。

(2021年度 株式会社NTTデータ数理システム 入社試験問題)

実はこの問題には元ネタがあります。2001年に千葉大学で出題された問題で、こちらの問題では左辺が$p^2$となっており、$x, y$には自然数という条件が付いていました。YouTube でこの問題を解説している動画を見ていて、「$p^2$ を $p$ に変えたらどうなるだろうか」と思ったのがきっかけでした。また、私は負の数を除け者にする「自然数」という条件はあまり好きではないので、「整数」に変えました。

こうして生まれた問題ですが、困ったことがあります。答えがただ一つに定まらず、無数に存在してしまうのです。そこで、$p$ を100以下の正の素数に限ることで問題として成立させることにしました。

問題の解説に入る前に問題文の言い回しについて説明しておきたいと思います。問題文には「100以下の正の素数」と書いてあります。これについて「素数が正なのは当たり前ではないか」と思う方もいらっしゃるかと思います。素数は初等的には「2以上の自然数であって、1と自分自身以外の正の約数を持たないもの」と定義されますが、より抽象的には「整数環 $\mathbb{Z}$ の素元」と定義されます。後者の定義に従えば $-2, -3, \dots$ なども素数となり、問1の解が無数に出てきてしまいます。当社の採用試験は、大学で専門の代数学を履修された学生さんも受験されることから、$p$ に正という条件をつけています。

解き方

それでは実際に解いてみましょう。まず、

[[x^3 + y^3 = (x+y)(x^2 - xy + y^2)]]

と因数分解できるので、$(x+y, x^2-xy+y^2) = (1, p), (p, 1), (-1, -p), (-p, -1)$ の4つの場合にしぼることができます。ですが、$x^2-xy+y^2 = (x-\frac{y}{2})^2+\frac{3}{4}y^2\geq 0$ より、$(x+y, x^2-xy+y^2) = (-1,-p),(-p,-1)$ はありえないことが分かり、結局 $(x+y, x^2-xy+y^2) = (1,p),(p,1) $の2つの場合のみを考えればよいことが分かります。

この2つの場合それぞれについてみていきます。

  • $(x+y, x^2-xy+y^2) = (1, p)$ の場合

$x = 1 - y$ を $x^2 - xy + y^2 = p$ に代入すると、$p  =3y(y-1) + 1$ となります。あとは $y$ にいろいろな値を代入して100以下の素数となる場合を列挙していくだけです。$y = 1, 2, 3, 4, 5, 6$ のとき $p = 1, 7, 19, 37, 61, 91$となり、$y$ がこれら以外の値をとるときは $p$ が101以上になるか、ここに挙げたいずれかの値に一致します。$p = 1$は素数ではないので答えは $p = 7, 19, 37, 61, 91$ としてしまいそうですが、これが落とし穴です。実は $91$ は $91 = 7 \times 13$ と素因数分解でき、素数ではありません。従って、この場合の答えは $p = 7, 19, 37, 61$ の4つです。

  • $(x + y, x^2 - xy + y^2) = (p, 1)$ の場合

上の場合と同様に一文字消去しても解けますが、$x^2 - xy + y^2 = 1$ に着目したほうが簡単です。先に計算した通り、$x^2 - xy + y^2 = (x - \frac{y}{2})^2 + \frac{3}{4}y^2$ なので、$|y|\geq 2$ ならば $x^2 - xy + y^2\geq 3$ です。$x$ についても同様のことがいえるので、$x, y$ の取りうる値は $-1, 0, 1$ のいずれかになります。このことから、$x^2 - xy + y^2 = 1$ となるケースは $(x,y) = (1,1), (1,0), (0,1), (0,-1), (-1,0), (-1,-1)$ に限られ、このうち $p = x+y$ が100以下の正の素数になるのは $(x,y) = (1,1)$ しかなく、このとき $p=2$ です。

以上のことから、$p=2, 7, 19, 37, 61$ が答えです。

元ネタの千葉大学の問題も同じような方法で解くことができます。いずれの問題も、高校数学の範囲で使っているのは $x^3 + y^3=(x + y)(x^2 - xy + y^2)$ の因数分解と $x^2 - xy + y^2 = (x - \frac{y}{2})^2 + \frac{3}{4}y^2$ の平方完成だけで、あとは難しい知識は必要としません。

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当社の筆記試験では、単に知識を問う問題ではなく、みなさんの考える力を問う問題作りを心掛けています。我こそは!という学生さんのご応募をお待ちしております。

アカリク NTTデータ数理システム 求人情報ページ

監修:株式会社NTTデータ数理システム 機械学習、統計解析、数理計画、シミュレーションなどの数理科学を 背景とした技術を活用し、業種・テーマを問わず幅広く仕事をしています。
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