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- NTTデータ数理システム新卒採用試験<数学>問題紹介 第三回 ~整数問題~
2022年2月 3日 14:00
2022年2月 3日 14:00
※試験の設定は2022年度時点の情報であり、2023年度以降は変更の可能性があります。試験内容についてはエントリーされた方にお送りする情報をご確認ください。
こんにちは、数理工学部の大場と申します。当社の入社試験の紹介も今回が最終回です。
2021年度の新卒採用を直撃したコロナ禍に対応するため、当社では筆記試験の形も見直すこととなりました。その過程で筆記試験をレポート形式にしようかという案があがり、実際にレポート問題を作成しました。今回の問題はそのレポート問題作成の過程で得た着想から私が作成した問題です。
正三角形タイルが無数に敷き詰められた平面があり、その各頂点の集合を $V$、各辺の集合を $E$ として無向無限グラフ $G=(V, E)$ を考えます。もともと作ろうと思っていたレポート問題は、このグラフ上での単純ランダムウォークの再帰性に関するものでした。$N$ 回目のステップで出発点に戻ってくる確率 $q_N$ の $N\to \infty$ での挙動を知りたい、という問題です。細かい話は省略しますが、その挙動の評価の中で
[[\sum_{0\leq k\leq 2n/3}{}_{2n}\mathrm{C}_{3k} \sim \frac{2^{2n}}{3}]]
を使う必要があったわけです。この評価のためには左辺を $k$ を使わないきれいな形にまとめなければなりません。そこで今回の問題です。
問題. 二項係数の3の倍数番目の和
[[\sum_{0\leq k\leq 2n/3}{}_{2n}\mathrm{C}_{3k}]]
を虚数単位を含まない形で求めよ。
ヒント:二項展開の式 $\displaystyle (1+x)^n = \sum_{k=0}^n {}_n \mathrm{C}_k x^k$ に1の3乗根を代入してみよ。
(2021年度 株式会社NTTデータ数理システム 入社試験問題)
類似の問題として有名なのが二項係数の偶数番目の和を求める問題です。
[[\sum_{0\leq k\leq n}{}_{2n}\mathrm{C}_{k} = \frac{1}{2}\left(\sum_{k=0}^{2n}{}_{2n}\mathrm{C}_k(+1)^k + \sum_{k=0}^{2n}{}_{2n}\mathrm{C}_k(-1)^k\right) = \frac{1}{2}\left((1+1)^{2n} + (1-1)^{2n}\right)=2^{2n-1}]]
方針としては3の倍数番目の和でも同じことで、2項定理に1の3乗根を代入した3つの等式を用いて計算するだけなのですが、これがなかなか計算が大変な割に得られる答えはきれいなものでした。
[[\sum_{0\leq k\leq 2n/3}{}_{2n}\mathrm{C}_{3k} = \begin{cases} (2^{2n}+2)/3 & (2n\mod 6=0 \text{ のとき}) \\ (2^{2n}-1)/3 & (2n\mod 6 = 2, 4 \text{ のとき}) \end{cases}]]
結果的に筆記試験はレポート形式ではなく、Web試験の形式で実施することになったのですが、そういえばあの評価で使った式は面白いじゃないか、ということで作成したのが本問です。計算途中、6で割った余りで場合分けをすることに気づけるかどうかがキモとなっており、具体的な数字で計算してみてその気づきを得る能力を問うています。例年、筆記試験チームでは難易度の調整に苦労しているところがあるのですが、本問は簡単すぎず難しすぎず、ちょうど良い調整になった例だと、作問者としては思っています。
数学の筆記試験は、微積分や線形代数など幅広い分野から出題しています。6問中2問選択ですので、苦手な分野の問題を無理に解く必要はありません。また、本問のように高校数学の範囲の問題が少なくとも2問以上含まれており、大学で数学を履修していない学生さんもご安心ください。
今回の紹介記事で少しでも当社に興味を持っていただければ幸いです。みなさまのエントリーをお待ちしております。