Profile:AI in ID-POS協働研究フォーラム 実店舗での実証実験を通じID-POS分析におけるPDCAの確立を目指し、2012年設立。2018年度から AI を加え研究体制を強化、2020年度は、(株)ダイヤモンド・リテイルメディアと(株)IDプラスアイの2社が事務局となり運営している。
株式会社IDプラスアイ 代表取締役社長 鈴木 聖一 様
ID-POSデータは、AI の学習データであると考える
AI によるID-POSデータ分析の研究をされているそうですね。
鈴木 POS(Point-of-Sales)は1970年代、コンビニエンスストアのレジで商品の販売管理システムとして導入されました。当初はどの商品がいくらで、いつ、どれだけ売れたかを記録するものでした。そして、30年ほど前に始まったポイントサービスにより、商品を購入した顧客の情報も把握できるID-POS(ID付き POS)へと進化しました。これにより、顧客の年代や性別なども組み合わせながら購買データを分析できるようになり、POS の時代は2次元だった分析が、ID が付くことで3次元になりました。それにともなって KPI は何十倍にも増えましたが、同時に扱うデータも膨大となり、もはや人間の手には負えない領域に達しています。であれば、どうするか。私はID-POS分析と AI との親和性を直観的に感じており、膨大なID-POSデータを人間が行う分析の対象ではなく、AI の学習データとしてとらえてみようと思ったのです。
ID-POS分析には BayoLinkS が有効だと伺いました。
鈴木 NTTデータ数理システムが提供している AI には BayoLinkS のほか、Visual Mining Studio(VMS)の二項ソフトクラスタリング機能(PLSA)や Deep Learner などがあり、いずれもID-POS分析に活用できます。その活用方法を数年間にわたって研究したところ、併売分析に BayoLinkS が最適という結果が出ました。「ぴったりとはまる」と言ってもいいくらいです。ID-POS分析の特徴として、顧客がどの商品とどの商品を一緒に買ったのかを見る「併売」と、ある期間にその商品を何回買ったのかを見る「頻度」があります。一方、BayoLinkS で表現されるベイジアンネットワークは、ノード間の因果関係についてAIC等を評価することで推定したものです。このベイジアンネットワーク上では、そのまま併売分析が行えます。またデータを BayoLinkS に投入する際、頻度の概念を加えることで、より的確な商品間の因果関係図を作り上げられることが分かりました。顧客の購入頻度を4段階(未購入・トライアル・リピート・ロイヤルカスタマー)に離散化し、その数値を学習データとして入力すると、現実的で応用しやすい結果が得られるのです。