株式会社IDプラスアイ 様 ベイジアンネットワーク、PLSA、深層学習によるID-POSデータ分析事例

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AI in ID-POS分析 ―ID-POS分析はAIで進化する―

ベイジアンネットワーク、PLSA、深層学習によるID-POSデータ分析事例

2021年4月22日 10:00

POS から ID-POS へと進化する中で、その分析手法を研究し続けてきたIDプラスアイの鈴木聖一様は、従来の統計的なID-POS分析の手法は AI に置き換えられること、それに あたってベイジアンネットワーク構築支援システム「BayoLinkS」が最適であるという研究成果を発表した。しかも、これまで不可能だった分析も可能になるという。その詳細について鈴木様に話を伺った。

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Profile:鈴木 聖一 様
経営コンサルタント。慶應義塾大学商学部、村田ゼミでマーケティングを学ぶ。1988年、(株)船井総合研究所入社。食品スーパーの活性化に幅広く取り組み、1992年、PI値にもとづくマーチャンダイジングの強化方法を確立。POSからID-POSへの進展とともに、2013年、(株)IDプラスアイを設立。近年はAIの研究開発にも取り組み、その成果を活かしたマーチャンダイジングや顧客IDにもとづくマーケティング戦略を提唱。

Profile:AI in ID-POS協働研究フォーラム
実店舗での実証実験を通じID-POS分析におけるPDCAの確立を目指し、2012年設立。2018年度から AI を加え研究体制を強化、2020年度は、(株)ダイヤモンド・リテイルメディアと(株)IDプラスアイの2社が事務局となり運営している。
株式会社IDプラスアイ
代表取締役社長
鈴木 聖一 様

ID-POSデータは、AI の学習データであると考える

AI によるID-POSデータ分析の研究をされているそうですね。

鈴木 POS(Point-of-Sales)は1970年代、コンビニエンスストアのレジで商品の販売管理システムとして導入されました。当初はどの商品がいくらで、いつ、どれだけ売れたかを記録するものでした。そして、30年ほど前に始まったポイントサービスにより、商品を購入した顧客の情報も把握できるID-POS(ID付き POS)へと進化しました。これにより、顧客の年代や性別なども組み合わせながら購買データを分析できるようになり、POS の時代は2次元だった分析が、ID が付くことで3次元になりました。それにともなって KPI は何十倍にも増えましたが、同時に扱うデータも膨大となり、もはや人間の手には負えない領域に達しています。であれば、どうするか。私はID-POS分析と AI との親和性を直観的に感じており、膨大なID-POSデータを人間が行う分析の対象ではなく、AI の学習データとしてとらえてみようと思ったのです。

ID-POS分析には BayoLinkS が有効だと伺いました。

鈴木 NTTデータ数理システムが提供している AI には BayoLinkS のほか、Visual Mining Studio(VMS)の二項ソフトクラスタリング機能(PLSA)や Deep Learner などがあり、いずれもID-POS分析に活用できます。その活用方法を数年間にわたって研究したところ、併売分析に BayoLinkS が最適という結果が出ました。「ぴったりとはまる」と言ってもいいくらいです。ID-POS分析の特徴として、顧客がどの商品とどの商品を一緒に買ったのかを見る「併売」と、ある期間にその商品を何回買ったのかを見る「頻度」があります。一方、BayoLinkS で表現されるベイジアンネットワークは、ノード間の因果関係についてAIC等を評価することで推定したものです。このベイジアンネットワーク上では、そのまま併売分析が行えます。またデータを BayoLinkS に投入する際、頻度の概念を加えることで、より的確な商品間の因果関係図を作り上げられることが分かりました。顧客の購入頻度を4段階(未購入・トライアル・リピート・ロイヤルカスタマー)に離散化し、その数値を学習データとして入力すると、現実的で応用しやすい結果が得られるのです。

ID-POS分析のF(頻度)の研究結果(離散化)を入れて学習データを作成する。0回、1回、2回、3回以上(SABZの視点)を導入。

見えなかった購買行動が、見えてくる

BayoLinkS によって、どのような分析が可能となるのでしょうか。

鈴木 最大で数百SKUの商品と、顧客数万人の併売分析ができます。このパフォーマンスがあれば、あらゆるカテゴリーの分析が十分に可能です。そして取り扱っているすべての商品どうしの因果関係、すなわち親子関係を視覚化し、確認することができます。さらに併売分析に頻度の視点を加え、例えばある商品を買った全顧客の併売状況やその頻度をグラフ化することもできます。また推論の機能を活用することで、商品や店舗に対する顧客のロイヤルティも測れます。これらはすべて従来のID-POS分析の手法では不可能でしたから、本当に画期的なことです。

実際の分析事例を教えていただけますか。

鈴木 BayoLinkS を使って棚割り分析を行う例をご紹介します。店舗の棚という概念は、BayoLinkS ではカテゴリーに該当します。そのカテゴリーを構成する全商品を横軸に、顧客の購入履歴を縦軸にして BayoLinkS に投入します。その結果を円形モデルで見ると、頻度にもとづく商品間の因果関係が一目で分かります。さらに、ばねモデルにし、ひとつひとつのクラスターを抽出し、整理すると棚割りを構成するための基本コンセプトが鮮明に浮かび上がります。

BayoLinkSの使い勝手はいかがですか。

鈴木 ID-POS分析に最適な AI のアルゴリズムを多方面で探していて、2年前にNTTデータ数理システムの製品に辿り着きました。さまざまな分析で各種のツールを使っていた経験から、まず VMSの PLSA から取り組んでみました。さらに Deep Learner、そして BayoLinkS に至りました。GUIが分かりやすく、初心者でも使いやすい。それが BayoLinkS を使い始めたときの印象です。使い方のヒントをNTTデータ数理システムのサポートから得たほか、セミナーにも参加して BayoLinkS やベイジアンネットワークに関する知見を広げました。実際のID-POSデータを使って実証実験を重ねるうちに、現実的で利用価値のある分析結果が出るようになり、同時に BayoLinkS に対する理解やスキルも加速度的に上がり、その相乗効果で研究が早いテンポで進むようになりました。現在、研究はまだ実証実験の段階ですが、実用化の目処は立ったと言っていい段階に入っています。

今後の展開をお聞かせください。

鈴木 商品と顧客との関係を深める、それがID-POS分析の目的です。BayoLinkS で併売分析を行えば店舗にとっても、また店舗に商品を提供するメーカーにとっても幅広く有用で、しかもエビデンスの取れた分析結果が得られます。これまでは対店舗、対メーカーそれぞれにデータ分析し、コンサルティングや提案を行ってきましたが、両者一体となって新たな施策を考えることも可能になるはずです。そうなれば、いままでよりも良い結果が効率的に得られるようになり、小売業界全体にとって大きなインパクトになることでしょう。それだけの影響力を BayoLinkS は持っていると考えています。この分野でのAI活用はまだ始まったばかりです。BayoLinkS のさらなる活用法の追求はもちろん、PLSA との組み合わせや Deep Learner での顧客行動の予測など、さまざまに応用できそうです。当社では現在、「AI in ID-POS協働研究フォーラム」を立上げ、AI によるID-POS分析に関して、実店舗での実証実験などの活動を行っています。興味のある方はこのフォーラムで一緒に研究してみませんか。ご参加をお待ちしています。

ご講演

「ID-POS分析はAIで進化する」、最新事例と実践活用の課題

2020年11月に開催した、数理システムユーザーコンファレンス2020でご講演いただきました。

ベイジアンネットワーク、PLSA、ディープラーニングの3種類の手法を効果的に組み合わせてID-POS分析に活用する方法についてお話しいただきました。

ご講演資料:「ID-POS分析はAIで進化する」、最新事例と実践活用の課題

参考資料:ID-POS分析とAI,仮説検証にAIをどう適用し,実践に活用するか
出典:オペレーションズ・リサーチ = Communications of the Operations Research Society of Japan : 経営の科学 66(1), 25-32, 2021-01

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出しわかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLinkS」、および「Visual Mining Studio」「Deep Learner」を活用された事例についてご紹介しました。データ分析を活用した課題解決について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?
2021年10月に「Visual Mining Studio」と「Deep Learner」 の後継製品として、AI・データ分析を内製化できるデータ分析プラットフォーム「Alkano」をリリースしました。それぞれ、定期的に製品について紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。

▼現在開催中のセミナー
Alkano の紹介セミナー
BayoLinkS の紹介セミナー

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。

監修:株式会社NTTデータ数理システム 機械学習、統計解析、数理計画、シミュレーションなどの数理科学を 背景とした技術を活用し、業種・テーマを問わず幅広く仕事をしています。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること
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