ミリマン様 × NTTデータ数理システム ベイジアンネットワークを活用した経営シミュレーション・リスク分析事例

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ディシジョン・メイキングは、BayoLink で進む

2020年11月12日 10:00

保険やヘルスケア、さらに企業経営での数理関連の知識やノウハウをもとに、各種コンサルティングを行う「アクチュアリー」という職業をご存じだろうか。世界規模のコンサルティングファーム、ミリマンでディレクターとして活動する岩崎宏介様もそのひとり。かねてからベイジアンネットワークを高く評価しており、そのツールである BayoLink を活用し、アクチュアリーとして幅広く活躍している。

Profile:ミリマン(Milliman, Inc.)様
1947年設立、アメリカやヨーロッパなど世界の主要都市に展開する世界でも最大規模の独立系の保険数理コンサルティング会社。岩崎氏はその日本オフィスのディレクターとして、メディカルやマーケティングの専門スタッフ4人とチームを組み、コンサルティングや各種サービス活動を展開している。

岩崎 宏介 様
ミリマン ディレクター
日本におけるヘルスケア部門およびデータ分析部門
日本アクチュアリー会正会員
米国アクチュアリー学会会員
経営学修士 岩崎 宏介 様

保険数理に非常に適しているベイジアンネットワーク

アクチュアリーとは、どのような職業でしょうか。

岩崎 アクチュアリーは日本では「保険数理士」と呼ばれます。きっかけは17世紀のロンドン、生命保険の仕組みができたとき、現在のように加入者の年齢や加入年数などに応じて毎月の支払額(保険料率)や保険料が変わるシステムが生み出されました。その保険設計にあたって、当時のイギリス社会の死亡率を確率論や統計学などを用いて解析し、毎月の掛金を算定するプロフェッショナルが誕生したのがアクチュアリーの始まりです。

現在、生命保険事業や損害保険事業のほか、年金事業、共済事業、企業の資産運用など多彩な分野で活躍しています。アクチュアリーは世界各地に存在し、日本では「日本アクチュアリー会」の資格試験に合格し、この会に所属していることが条件となっています。私もこの資格を取り2000年に渡米し、米国アクチュアリー学会会員の資格も得ています。あちらで13年間ほど経験した後、現在は日本でヘルスケア部門およびデータ分析のディレクターとして活動しています。

ベイジアンネットワークをどのように利用していますか。

岩崎 企業経営やビジネス展開で、ディシジョン・メイキングをサポートするのが私たちの仕事です。どんなビジネスもリスクがあり、それを許容しながらリターンを取りますが、私たちはそれらをエビデンスに基づいてシミュレーションしていきます。その際に有効なツールが、ベイジアンネットワークです。

例えば製薬会社のマーケティング施策で、コンシューマー向けの疾病啓発コマーシャルを展開する場合と、医療の発展に貢献する論文作成を支援する場合とでは、どちらが自社の医薬売上げに貢献するかという案件があったとします。疾病啓発コマーシャルの反響が医薬の売上げにどのように影響を及ぼすか。一方で、医学論文によって KOLKey Opinion Leader)とのエンゲージメントがどれだけ増え、それが医薬売上げにどう貢献するか。会社のビジネスモデルで何が何に影響するかを、ベイジアンネットワークはグラフィカルモデリングにより因果関係を描き出しながらモデル化できます。

アクチュアリーの世界では、すでに19世紀からベイジアンネットワークを使っていました。

ベイジアンネットワークのメリットを教えてください。

岩崎 私が気に入っているのは、データを追加できるという点です。先の例で言うと、KOLエンゲージメント向上により、他の医師にどのように影響し、それは売上げにどう波及するかといったデータが集められないことがあります。データがない、つまり分からないことは旧来的な手法では、「影響ゼロ」と仮定するしかありませんでした。しかしそれは極端すぎる仮定だと私は思うのです。この場合はだいたいこれくらいだろうと、実数は分からないけれどもある程度広い分布を仮定する方が合理的な場合がよくあります。

ベイジアンネットワークであれば、そのざっくりとしたデータ分布であっても柔軟にネットワークを作ってくれたり、推論してくれます。データが分からないなりに最善の推論が導き出せる。さまざまな過程に基づいて推論を行うビジネスコンサルには、非常に適したツールと言えます。

関係者全員の合意形成を、BayoLink が促進する

BayoLink はいつからお使いですか。

岩崎 5年ほど前、日本で活動するようになってから使い始めました。日本語ベースによるベイジアンネットワークのツールなので、例えば院内感染の因果関係を探る際なども日本語でモデル化できて便利です。また、因果関係を自動的にグラフィカルモデルにしてくれたり、その際の推移確率も自動で出してくれる。自動化が進んでいるおかげで、その分の労力を本来の分析業務に振り向けることができます。さらに親子関係も分かりやすく、あとから手動で変更できる。自分の頭に描いていることが、画面上に容易に再現できるわけです。

BayoLink で業界の予測を行ったことがあります。現在、厚生労働省は病院の入院日数を削減する方針をとり、実際に日数は減少していました。しかし私は、今後も同様に減り続けるのか、高齢化で入院患者が増え入院日数が増加することはないのか、4年ほど前に BayoLink で予測をしてみました。その結果、今後は増加するという結果が得られました。そして実際に、現在は微増の傾向を示しています。入院日数の増加は、病院経営や保険会社運営のリスク要因となるため、注意が必要と考えています。

また医療の現場に直結する使用例として、病院リスクマネジメントへの応用もあります。ある病院で発生した3,498件のインシデントレポートから、BayoLinkにより潜在的リスク要因との関係性や影響度を定量化し、学会で発表しています。 

BayoLink による病院のリスク分析例-1
インシデントのカテゴリを定義し、リスク要因やその背景因子を設定し、因果関係のネットワーク図を構築

BayoLink による病院のリスク分析例-2
因果関係のネットワークにおいてインシデントが発生する確率も自動計算できる

ディシジョン・メイキングのために、BayoLink をどのように役立てていますか。

岩崎 私たちが行っているビジネスコンサルティングは、直接のクライアントであるコンタクト・パーソンが、上へ、下へ、横へ説明し、納得してもらえないと真の成功とは言えません。例えば、今後発生するであろう企業運営のリスクを全体およびビジネスブロックごとに予測し、各ビジネスブロックに必要な資本を割り当てる、つまりビジネスを取捨選択することを私たちが提案するとします。その時に「本当に大丈夫なのか」「コンサルタントの主観ではないのか」といった疑念がクライアントにあると、ディシジョン・メイキングは進みません。

そんなときに効果的なのが BayoLink です。私たちはよく関係者を一堂に集め、BayoLink を使って因果関係を探るという会議を開催します。BayoLink は、リスクを客観的にあぶり出して定量化できるという点はもちろんですが、グラフィカルなネットワークモデルは見た目が分かりやすく訴求力があるので、ディスカッションが進むのです。その結果、多くの人が納得した上で合意形成を行うことができます。そうしたプロセスをご評価いただき、全社的な視点を全社員が持つためのトレーニングなどに、この会議スタイルを採用してくださる企業様もあります。

今後の展望をお聞かせください。

岩崎 「人の人生は、ベイジアンネットワークである」とも言えましょうか。私たちの毎日は因果関係に左右されていて、未来を予測しようとしたらそれらの関係をかたちにして仮定しなければなりません。そのとき、BayoLink を使えば大胆な仮定やデータの揃わない緩い仮定でも柔軟に対応し、ネットワークモデルの構築から確率計算まで自動でやってくれます。こうした因果関係による予測は人だけでなく企業活動にも応用できます。どんなビジネスにもリスクがあって、それを許容しながらリターンを取っています。そのリスクやリターンのマネジメントに BayoLink は役立ちます。事業の選択や集中の場合にも、十分に納得できる予測ができるはずです。こうした BayoLink の特徴を活かして、企業の経営戦略策定などにも携わっていきたいと考えています。

※BayoLink は現在 BayoLinkS に名称変更しております。

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLink(ベイヨリンク)」を活用していただいた事例についてご紹介しました。ベイジアンネットワークを活用した課題解決や BayoLink について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、BayoLink のページをご覧ください。製品紹介のオンラインウェビナーも定期的に開催しております。

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。