ベイジアンネットワークによる次世代AIの活用方法(開発者インタビュー)

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このAIは、人と人とのより良い相互理解を促します

2019年12月25日 12:18

ビッグデータやIoTが本格化する今、そのデータから依存関係を抽出し確率推論などを可能にする次世代AIとして注目のベイジアンネットワーク。数理システムではそのソフトウェアとして「BayoLink」を提供している。新世代AIの呼び声が高いこの技術の研究にいち早く取り組み、BayoLinkの開発者でもありユーザーでもある産業技術総合研究所(以下、産総研)の本村陽一首席研究員に、その機能や可能性をうかがった。

Profile:本村 陽一様
人工知能学会理事、サービス学会理事、行動計量学会理事などを歴任。主な研究テーマに「次世代人工知能研究(データ知識融合型人工知能、社会現象の確率的モデル化と最適制御)」「ベイジアンネットワークによる不確実性モデリング」「サービス工学における大規模データモデリング」「人間行動モデリングのための確率・統計的手法の研究」がある。東京工業大学大学院特定教授、統計数理研究所客員教授、東京理科大学客員教授も兼任。

人工知能研究センター首席研究員/博士(工学)本村 陽一 様

ニューラルネットワークを究めて、ベイジアンネットワークに行き着いた

本村先生は、ベイジアンネットワーク研究にいち早く着手されましたね。

今ディープラーニングが話題になっていますが、25年前(1990年頃)にその元となる階層型ニューラルネットワークを研究していました。その中でUAIという国際会議でベイジアンネットワークを知ったのです。 それまでのXからYに変換する認識モデルのパラメーター学習よりも上位概念である確率モデルの構造学習もでき、それにより不確実性を確率として表現できたり、現象の予測や学習、未知の不確実性に対する推論結果を出すモデルで、大きな可能性や魅力を感じ、研究を始めました。

BayoLink開発の経緯を教えていただけますか。

数理システムの「BayoLink」は、当初、私がベイジアンネットワーク研究で開発したプログラムを実装したものを原型として、2002年に製品化されました。当時はまだ未知数だったベイジアンネットワークを実感してもらうこと、そしてユーザーを増やすためにも信頼性やユーザビリティに充分留意して開発しました。 その後は私と数理システムとで、研究開発の成果や利用者のニーズを取り入れるなど、ブラッシュアップを続けています。

確率計算により、不確実な事象の予測も可能

BayoLinkでは、どのようなことができますか。

ディープラーニングのような、ある入力のパターンに対する予測と、さらにその予測した結果の確率計算ができます。また、その予測を行うモデルの構造を学習します。従って不確実な対象の予測と同時に予測の信頼性の確認や、予測に対する別の変数の影響(関係や感度)を見ることに向いています。 これからのIoT時代には各種センサーによりモノの観測データは増えますが、それでもなお、人間の行動のようにはっきりと計測できない現象にアプローチしたり予測したいという課題も残ります。そんな場合はビッグデータの中からBayoLinkで予測したい現象の依存関係を探り、その関係性を確率的な構造としてモデル化することで、状況や文脈に依存する人間の行動などがうまく予測できるようになります。 活用例として、喫煙や過度の飲酒など健康面で問題のある行動をする人に対し、それを予測して良い方向に戻すような働きかけができないかという取り組みが行政機関との共同プロジェクトで行われています。

従来のAIとの違いやその機能を教えていただけますか。

普通のパターン認識はXを入れたらYを予測するという認識モデルをパラメーターの学習で作りますが、BayoLinkはまず、データセットがあったらその変数の間にどのような関係があるか依存関係のネットワークを作り、その現象を説明する構造モデルを作ります。 目的変数と説明変数を事前に人が特定するのが従来のAIだとすると、BayoLinkは特定の変数間の関係に縛られないAIです。一般的にアルゴリズムには特定の目的がありますが、BayoLinkはモデルを作るということに徹して、その後で作ったモデルを利用するアルゴリズムを別に設定できるため、出来上がったモデルはさまざまな使い方ができます。 例としてECサイトの商品レコメンドがあります。商品Aを買った人に商品Bをパターン認識的にレコメンドする方法がありますが、BayoLinkでは商品を買った人のデータのほかに、購入後に関心を示した商品や、最終的に買った商品など他の情報も取り入れて購買行動という現象を確率的なモデルにし、その後、モデルを活用し確率的な推論を行います。それにより商品のレコメンドだけでなく商品の購買理由や、購買しなかった背後の理由を予測したり、さらにその商品に合った顧客層や推薦理由の予測にも活用できます。 こうした予測と確率的な推論を繰り返すアルゴリズムを洗練させることで、その人がまだ気がついていないニーズや、その背後にある価値をレコメンドすることもできるようになるでしょう。

Text Mining Studioとの連係も効果的

利用にあたって適しているデータはありますか。

BayoLinkには、ID-POSやQ&A、各種テキストデータやセンサーデータなどさまざまなビッグデータが活用できます。その中でも特にテキストはさまざまな意味があり分類もしやすいため、ビッグデータの中から意味を抽出して理解するためにBayoLinkとの組み合わせは非常に有望だと思います。さらに数理システムの「Text Mining Studio」のようなツールの併用により可能性がさらに広がると思います。 介護施設で介護者の状態を知りたいというニーズがあったとき、介護記録のテキストデータや業務記録データ、さらに各種センサーなどのデータを総合して現場の状況を理解することが重要ですが、そのときにテキストマイニングのデータやIoTセンサーデータなどを統合してモデル化できるBayoLinkはきっと役立つでしょう。

BayoLinkの将来性について、お聞かせください。

モデルの構造を持続的に学習し、進化し続けるBayoLinkは、本当にAIらしい仕組みだと思っています。これからのAIはモデル自体を拡張することが必須で、自己拡張性、自己改変性が不可欠です。そして今、それがビッグデータやIoTによって容易になっています。さらにBayoLinkは、データ学習のほか人間の知識を直接移転したり埋め込んだりすることが可能です。要素と関係性というモデル形式は人間に対する理解の仕方と同じなので、人にとっても相互理解や共感ができます。そう考えると、BayoLinkは人と相互理解できることを通じて、共通の現象に対する人同士の相互理解も促すAIといえます。 マーケット分析をしたい会社がお客様を理解しようとしてBayoLinkを導入し、マーケットの現象のモデル化を進めれば、その会社とお客様のより良い理解や関係づくりはもっと進んでいくことでしょう。

BayoLinkは、どのような人におすすめですか。

目的変数と説明変数の組でモデルが効率的に作れるので、目的や目的変数を含めたデータを持っている人にぜひおすすめしたいですね。またその目的を達成する手段が説明変数になるので、目的を達成する手段を探している人にも使っていただきたいです。ディープラーニングのようにモデル内部がブラックボックスとなりがちでユーザーが受け身になってしまう他のAIと違って、モデルの中身、構造や予測結果の確率が見え、積極的に手を入れることもできるため、自分でやりたいことや確かめたい仮説、シナリオがある能動的な人には、とても魅力的なAIです。 今、BayoLinkを利用される方がとても増えています。また、ユーザー同士のコミュニティ「産総研人工知能技術コンソーシアム」が産総研人工知能研究センターの中にでき、定期的に勉強会を開くなど環境も整いはじめています。あなたもぜひ、この機会にこの次世代AIにチャレンジしてください。

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLink (ベイヨリンク)」の開発者に話を伺いました。 ベイジアンネットワークを活用した課題解決やBayoLinkについて、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、BayoLinkのページをご覧ください。

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします! ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。