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AI間自動交渉で物流業界の未来をつくる

2020年10月26日 13:00

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の公募事業に採択され、AI間連携基盤技術の開発に取り組んでいる沖電気工業株式会社様。労働者不足や二酸化炭素排出といった社会課題を解決し、トラック輸送業界の発展に寄与する新しいマーケット構想の実現に向けて、NTTデータ数理システムのツールや実装サポートを活用しながら研究開発を進めている。

Profile:沖電気工業株式会社 様
1881(明治14)年、日本最初の通信機器メーカーとして創業。情報通信、メカトロシステム、EMS、プリンターなどの各分野における製造・販売およびこれらに関するシステムの構築・ソリューションの提供、工事・保守・その他サービスなどの事業を展開。研究開発センターは、『より安全で便利な社会』の実現を目指し、積極的に先端技術の開発を推進している。その実現に向けた重要技術領域を「センシング」「スマートネットワーク」「データマイニング」とし、さらに OKI が伝統的に強みを持つメディア処理技術と光ブロードバンド技術を合わせて、OKI のシステム構築力との高度な融合を進めている。

樋田 愛 様
経営基盤本部 研究開発センター AI技術研究開発部
樋田 愛 様

AIの自動交渉プラットフォーム

NEDO の公募事業に採択されたそうですね。

樋田 内閣府総合科学技術・イノベーション会議が科学技術イノベーション実現のために創設した事業に、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」がありますが、そのうち NEDO が公募した「SIP第2期/ビッグデータ・AI を活用したサイバー空間基盤技術」の研究開発項目「AI間連携基盤技術」に採択されました。さまざまな AI で制御されているシステムにおいて、複数の AI が協調・連携する基盤技術を新たに作り、産業や社会の発展に寄与することを目指しています。これは日本電気株式会社(以下、NEC)を主幹に、沖電気工業株式会社(以下、OKI)、東京農工大学、東京大学大学院情報理工学系研究科、豊田通商株式会社(以下、豊田通商)が共同で取り組んでいるプロジェクトです。NEC は製造業界の部材受発注に加え、豊田通商とともに航空輸送業界のユースケースを担当、私たち OKI はトラック輸送業界のユースケースを担当、各大学は自動交渉などの要素技術の研究を担当しています。産学連携で情報共有や技術討議を行いながら、基盤となる技術の開発を進めています。

受発注の条件をAI同士が交渉するプラットフォームと聞きました。

樋田 ビジネスは発注者と受注者の条件合意によって成立します。例えば OKI が担当しているトラック物流では、発注者の依頼条件をそのまま受け入れることが多いと聞いていますが、それだと受注側のコストパフォーマンスが落ちてしまいます。繁忙期はトラックが足りず、「次の日なら他の貨物と一緒に運べるので、日にちを変更できませんか?」などと担当者同士で直接交渉を行うこともあるようですが、個社間での人力によるやりとりだけでは能力的にも効率的にも限界があります。そこで新たな第三者プラットフォームを作り、ここに関係各社を集め、受発注条件の調整や交渉を横断的に行ってはどうかというのが構想の原点です。これが実現すれば多数の取引先と24時間交渉できるようになるだけでなく、発注側・受注側ともに会社の枠を越えて業界全体で利潤の最大化が進むなど、大きなインパクトが出てくることでしょう。

OKI 様のプラットフォームについて教えていただけますか。

樋田 物流会社では発注者である荷主からの依頼を集めて、それに基づいてトラックやドライバーの手配を行い、輸配送計画を作成しています。我々のプラットフォームはまず、参加する複数の物流会社から各社の輸配送計画を集めます。ここで“A社の計画aとB社の計画bをマージすれば運行トラック数を減らせる”など、複数社の輸配送計画を横断的に調整して新しい計画に組み直し、各社に提案します。ただ、そうなると物流会社では荷物を他社に委譲するなどのマイナス要因が発生する場合がありますし、荷主にとっても集配日時や料金などに変更が生じることが出てきます。それらが許容できるものなのか、いつまでにどのくらいの料金で輸送できれば荷主が納得できるか、このような内容を、人に代わってAI同士がすり合わせます。輸送を委譲した会社にインセンティブを与えたり、特定の会社に輸送が集まらないようにしたりと、公共的なプラットフォームとしての公平性の担保にも気を配っています。

AI間交渉・強調プラットフォームの全体像
物流手配における業界横断的な輸配送計画調整と自動交渉を組み合わせた統合プラットフォーム。
各社の利潤を担保しつつ、社会的利益が最大になることを狙う

AI による交渉は、どのように行うのでしょうか。

樋田 物流会社・荷主・荷受者など、参加者ごとに交渉エージェントとなる AI を設定し、その AI がプラットフォーム運営者の交渉エージェントAIと交渉する、というものを考えています。この場合、複数のエージェントAIが同時に動作し相互作用する必要があるため、それをマルチエージェントシミュレータである S4 Simulation System上で行おうとしています。各エージェントAIは、“どういう条件の提案に合意すると、どの程度自分にメリットがあるか”を評価する効用関数を持っていますが、その内容は交渉相手には見えません。また、“自分にとって都合の良い方向に相手を導くためには、どのような条件の提案を行うべきか”といった交渉戦略も持っており、これに従って相互に条件を提案するという方法で、AI同士が交渉するのです。相手のメッセージの背後にある効用関数を推測し、自らの効用関数も参照しながら、価格や納期、輸送方法などの条件をすり合わせ、互いに Win-Win になるような結論を探っていく。そんな方法を考えています。

AI間交渉イメージ
交渉エージェントAIが互いの効用関数を推測しながら、
価格・納期・個数などのパラメーターを調整する

枠組みから作ることで、全体が見えてくる

開発のプロセスを教えていただけますか。

樋田 コンセプトや理論方式を、いかにかたちにするか。AI同士が交渉することは最初から決まっているので、それを実際に動くシステムとして実装するためにどんなツールを使ったらいいか。そこから今回のプロジェクトは始まりました。そこで当社の他のシステム構築等でもツール提供や実装サポートの実績があるNTTデータ数理システムに、私たちが考えたコンセプトや理論方式を示し、これを実装可能か相談したところ、S4 Simulation System をベースに、AI の交渉ロジックの枠組みやプラットフォームのプロトタイプなど実装方法の具体化を進めてくださいました。また、AI による自動交渉の前段階として輸配送計画の調整を行いますが、これについても OKI が考えていた手法に沿って、Numerical Optimizer による実装を進めていただくこととなりました。今回のプロジェクトでは、先例のないコンセプトや理論方式を形にするために、理論の設計とプロトタイプ実装を繰り返しながら方式を確立していくスパイラル型の研究開発で進めています。NTTデータ数理システムは、こちらが要求するさまざまなプロトタイプ実装の仕様に応えるスキルを有しており、キャッチボールがスムーズで慣れていると感じました。

開発の手応えはいかがですか。

樋田 計画調整と自動交渉の枠組みができ、第一段階の仕様が固まったという状況です。いよいよ、構想がかたちになります。実装を依頼した当初、私たちの研究結果は単なる理論方式だったため、これをどのように実装するべきか悩んでいました。しかし、豊富な開発経験を持つNTTデータ数理システムと議論を重ねることで、実装上の方法や要件を整理することができました。また、プラットフォームの交渉エージェントAIをハブにして各社のエージェントAIとそれぞれピア・トゥ・ピアで交渉させようといった、具体的な交渉の実装方式も決まりました。これならプロジェクトとして進行させられる、と確信しています。

開発の今後の展望についてお聞かせください。

樋田 新しい発想の新しいプラットフォームですので、ビジネスとして受け入れられていくのか、物流会社の現場で利用していただけるか、不安がないわけではありません。ただ、いま社会的な問題となっている労働者不足は、物流業界では特に顕著です。トラックドライバーは高齢化が進み、これまで経験とカンで輸配送計画を立てていたベテランスタッフの退職もこれから増えます。さらに二酸化炭素排出量削減の観点から、トラックの無駄な運行も減らす必要があるでしょう。これらの課題解決はもちろん各社の問題ですが、一方で次の時代に向けて新たな体制を業界全体で整えていく必要もあるのではないでしょうか。その仕組みのひとつとして、いま開発しているプラットフォームが役立ってくれることを目指し、これからもNTTデータ数理システムのご協力のもと研究開発を続けていきます。

おわりに

今回は、誰でも簡単に複雑なモデルをGUI上で表現しシミュレーションを行なえる汎用シミュレーションシステム「S4 Simulation System」を活用していただいた事例についてご紹介しました。 シミュレーションを活用した課題解決やS4について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、S4のページをご覧ください。製品紹介のオンラインウェビナーも定期的に開催しております。

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします! ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。