マーケティング分析、要因分析へのベイジアンネットワークの活用

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ベテランマーケターの頭の中をベイジアンネットワークで

マーケティング分析、要因分析へのベイジアンネットワークの活用

2021年4月 1日 13:00

昨今、AIツールとして注目されているベイジアンネットワーク。ベイジアンネットワーク構築支援システム BayoLinkS の技術者が、その魅力や具体的な活用事例を語ります。

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Profile:山口 裕
2005年入社。製品設計の多目的最適化やマルチエージェントモデルを用いた研究開発支援などに従事。近年は顧客分析ツールの開発や製造現場の不良要因分析などデー タサイエンスを中心に取り組む。
Profile:石富 妙
大学で無機物理化学を専攻。入社後は BayoLinkS の開発に従事し、ベイジアンネットワークに関する受託分析・コンサルティングも担当。現在、統計的因果推論・傾向スコア技術に着目中。

NTTデータ数理システム
データマイニング部
山口 裕

NTTデータ数理システム
データマイニング部
石富 妙

人の知見とデータを融合して、現場が納得できる分析を実現

今、なぜ、ベイジアンネットワークがAI技術として注目されているのでしょうか。

石富 ベイジアンネットワークの特徴の1つに、人の知見をネットワークに反映できるという点があります。日々業務をされている現場の方には、その中で培ってきた素晴らしい知見がおありだと思いますが、関係性がすでに分かっている、もしくは現場に落とし込む上でこうあるべきという部分については、それらを考慮して学習をすることができます。つまり、人の知見とデータを融合させてモデルを作成することができるのです。
また、一般的な機械学習のアルゴリズムは目的を定めた上でモデルを作成しますが、ベイジアンネットワークは、学習データからまず各項目の関係性を表現したネットワークを構築できます。そのため、さまざまな目的に対して自由に推論を繰り広げることができます。人は通常、今まで経験した体験・知識をベースに思考を巡らせ物事を判断しますが、ベイジアンネットワークモデルは、それに非常に近い形での分析ができるので、AI技術として認識していただいているのではないでしょうか。

具体的な活用事例を教えてください。

山口 最近は日報やお客様への対応メモ、特許情報など、テキスト(文章)情報を組み合わせた分析のご相談が多い印象ですね。ある大手化粧品メーカー様では、コールセンターに集まってくるお客様の声と商品情報、顧客情報などを組み合わせてベイジアンネットワークを用いて分析をされました。
お客様の声はテキストとして記録されているので、まず当社のテキストマイニングツールText Mining Studio(TMS)を用いてテキストマイニングを行った後に、TMS上でカテゴリデータを作成します。そして、そのデータを他の情報とともにベイジアンネットワークに入力します。その結果、ある顧客セグメントのテキストデータの中に「特定の単語」が入っているとサプリメントを購入する確率が格段に上がることが分かりました。さらに興味深かったのは、いわゆる「死に筋」と見ていた商品の購入とロイヤルカスタマーが紐づいていたことです。実は一定数のロイヤルカスタマーの方々がその商品を 長期的に購入しており、その商品単体の売り上げとしては低いものの、その商品があることで良いお客様が定着していたということが分かったのです。
自分が買い物をするときもそうですが、人が商品を購入する心理というのは実に複雑です。価格や商品の質、口コミ、ブランドなどはもちろんですが、自分は必要ないけれど家族のために買おう、とか、最近転職をして生活スタイルが変わった、などの環境の変化が、もしかしたら商品の購入に関係しているかもしれません。さまざまなことが複雑に絡み合って最終的にどの商品を購入するかを決定するのが人間です。

要因分析のお問い合わせが多いそうですね。

石富 要因分析はベイジアンネットワークに期待される分析の1つだと思います。
「 現場のベテランの知見からAIを構築したい」というご相談はとても多いのですが、例えば、何か大きな売り上げの変化や異常等が起こったときに、現場のベテランの方はそれまで培ってきた経験と勘を元に原因を考え、対策を打ち出しますよね。それはつまり「これとこれが関係して今この現状が起こっているだろう」と頭の中で要因分析をしているということ。ただし、その要因分析はそのまま取り出せるほど単純ではないと思います。ベイジアンネットワークでは彼らの知見を視覚的に構造化するだけではなく、収集されたデータで裏付けをするため、現場に沿った要因分析ができます。先ほどの化粧品メーカー様の事例では、ベテランマーケターの頭の中をベイジアンネットワークで表現したといえるのではないでしょうか。実際、BayoLinkSユーザー様からは、「結果が現場の感覚にフィットしていて納得感がある」という評価をいただくことが多いのです。
このようなマーケティング分野以外にも、不具合・事故の要因分析などをはじめ、疾病リスクの予測と対策のための分析、また、農業分野では収穫量と環境の分析など、本当にさまざまな分野でご活用いただいています。

周囲を巻き込み結果を出せるツール

BayoLinkS ならではの特長を教えてください。

山口 BayoLinkS は簡単なマウスクリック操作で分析を実行できるという大きな特長があります。ネットワーク上で推論モニターを表示させ、その上で直感的に分析が可能です(機能例1)。また、目的変数に関係の強い変数をランキングで表示できる感度分析機能(機能例2)も重宝してくださっている方が多いです。視 覚的にも操作的にも、分析には詳しくない方や、現場・経営層の方にも理解していただきやすいと思います。実際に、BayoLinkS を使いながら現場の方やクライアントと打ち合わせをするお客様もいらっしゃるく らいです。
現実にどんな課題があり、どのようなアプローチをすれば効果的な業務改善ができるのか、各現場に合った分析と提案をするためにも、分析担当者にとって現場の方の協力は不可欠です。BayoLinkS を使うことで、周囲を巻き込みながら現場に合った分析を実現していただきたいです。

機能例1 ネットワークを作成し、自由に推論が可能

機能例2  目的変数に関係の強い変数をランキングで表示できる感度分析機能

今後の展望について聞かせていただけますか。

石富 2022年3月に数理システムのデータ分析基盤MSIP上で動作する製品となり、前処理機能の充実や、各作業フローを把握しやすくなりました。カテゴリデータを扱うという性質上、以前から離散化や前処理機能のご要望が多かったのですが、それらもBayoLinkS上で完結できるようになりました。今後も、多様化している分析ニーズに応えられるような開発をしていきたいですし、ベイジアンネットワークを必要としている方に BayoLinkS をお届けしたいです。

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLinkS(ベイヨリンクエス)」を活用していただいた事例についてご紹介しました。
ベイジアンネットワークを活用した課題解決や BayoLinkS について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、BayoLinkS のページをご覧ください。製品紹介のオンラインウェビナーも定期的に開催しております。

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また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。

監修:株式会社NTTデータ数理システム 機械学習、統計解析、数理計画、シミュレーションなどの数理科学を 背景とした技術を活用し、業種・テーマを問わず幅広く仕事をしています。
http://www.msi.co.jp NTTデータ数理システムができること
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