情報通信総合研究所 × NTTデータ数理システム 対談:AI導入を成功させるためはどうしたらいいですか

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2020年6月 8日 19:08

いま注目の最新技術、AI(Artificial Intelligence、人工知能)について、株式会社情報通信総合研究所様(以下、ICR)から取材を受け、当社のシミュレーション&マイニング部部長 雪島正敏が対応しました。NTTデータ数理システムにおける AI とは、また導入にあたって知っておくべきことや、AI の近未来などについて、取材でかわされた会話の一部をお届けします。

株式会社NTTデータ数理システム
シミュレーション&マイニング部
部長 雪島 正敏
株式会社情報通信総合研究所
ICTリサーチ・コンサルティング部
主任研究員 滝田 辰夫 氏(右)
主任研究員 三本松 憲生 氏(左)

AI には、コアとなる技術がある

ICR いま、AI が社会やビジネスの大きなキーワードになっていますが、ひとくちで言うとどういうシステムなのでしょうか。

雪島 コンピュータにより自分で問題設定と解決ができる仕組みを社会一般で「AI」と呼んでいます。これらはディープラーニングやシミュレーション、最適化など数理科学の技術とそのノウハウがベースとなっており、我々はそういう AI 的な働きのコアとなる技術を研究・開発しています。

ICR コアとなる技術とは、例えばどんなものでしょうか。

雪島 AI的な働きをさせる技術のひとつである最適化は、運送や運転の計画立案、お店やコールセンターのシフトスケジュール作成などによく活用される技術です。問題の解決には数理科学の知識や手法が必要で、これなども我々の強みです。

ICR パッケージ製品のリリースや、ソリューションなども展開されていますね。

雪島 当社は AI というキーワードが出る以前から、このような数理科学のパッケージソフトを開発・販売しています。データマイニングやテキストマイニングのツールをはじめ、画像分類サービス、汎用数理計画法、汎用シミュレーションシステムなどをご提供しています。

また、ディープラーニング実行モジュールもありますので、これらの組み合わせによりAI的な仕組みを作ることも可能です。当社の製品をベースに、自社内でAIシステムを開発されている企業様もあります。またソリューションでは AI のコア技術によるシステム開発のほか、システムにおいて数理科学の計算や処理が必要となる部分を当社が担当することもあります。

ICR 最近の AI の特徴は何でしょうか。

雪島 自動的に推論したり判断する際のタスクが、非常に複雑になっている印象があります。以前は、例えば画像認識であればイヌかネコか見分けるだけで、認識精度も指標化しやすく、仕組み全体の評価も比較的容易でした。しかし最近はタスク自体が複雑になり、評価のためにどういう指標を立てるべきか、その指標のどの点を見て判断すべきか迷うときもあります。

そういうときはお客様と細かく話し合って、最終的にどんなデータや結果が必要なのかを確認し、そこから逆算して指標の設定などを設定します。タスクがいくつも分かれている場合、複数の指標を設定することもあります。

良いデータが正しい AI をつくる

ICR データの質の問題もありますよね。産業分野などでは“データは次代の石油”とまで言われ、企業などでもデータ収集を進めていますが、実際のところ、どれだけ AI などに活用できるでしょうか。

雪島 目的に応じてデータを“使えるカタチ”で持っていることが大事です。AI に学習をさせたいとき、その教師データとして使えるようにすでにあるデータを加工しておく、といったことです。いま、IoT やクラウドであらゆる所からたくさんのデータを収集できるようになりましたが、それだけでは実は使い道のないことがあります。

ICR 逆に、持っているデータが少ないけれど AI を組み立てたい、利用したいといったお客様もいらっしゃると思いますが、その場合はどう対応していますか。

雪島 ケースバイケースですが、別のデータを活用する方法があります。例えば画像認識で、基本的な特徴量抽出は一般的な画像で行い、細部に関してはドメイン内の情報でファインチューニングして精度を上げたりしています。また、ディープラーニングでデータが少ない場合、別のタスクで活用できるデータをトランスファーしたりします。そのほか、データの属性情報が少なくて正確な判断や推測が難しいという場合には、そこを埋める当社ツールを使って補完しています。

導入に不可欠な「見極め」

ICR  AI の導入にあたって、気をつけたい点はありますか。

雪島 「見極め」だと思います。AI は何でもできるわけではありません。また、内容・タスクによっては AI のような高度なシステムを使わなくても、もっと簡単なシステムで解決できる場合もあります。AI に何をやらせたいのか、それによって何を達成したいのか、をきちんと整理する必要があります。

達成したい内容のひとつに精度があります。導入を決定して構築を進め、精度の確認の段階になったとき、そのゴールをなかなか決められないことがよくあります。新システムに期待するあまり、「もっとチューニングすれば、もっと精度が上がるのではないか」と、際限のない精度追求が始まることがあります。いたずらに追求しても、コストがかかるだけでメリットはあまりありません。この仕組みは何を解決するために構築するのか、そのためにはどの程度の精度があれば充分なのか、しっかり見極めて開発にあたるべきだと思います。

ICR 世の中で思われているほど、AI はまだ万能ではないということでしょうか。

雪島 私が知る限り、問題設定から解決まで自己完結できるような、真の意味での AI はまだ開発されていません。ですから過大に期待することなく、人間を補助するためのひとつのツールとしてとらえたほうがいいと思います。

ICR 今後、AI はどんな分野で活用されていくでしょうか。

雪島 画像やパターンを認識したり、分類したりすることはある程度のレベルに到達し、設備機器の管理や生産現場での品質管理などに幅広く応用されています。また、社会で関心を集めている自動運転システムや、身近なものでは掃除ロボットなどに応用されている制御系AIも、今後ますます活用が進むでしょう。

制御系のタスクはコンピュータシミュレーションが容易で、その情報を教師データとして活用できるので、こういったシステムと相性が良いです。テキストなどの文章系も今後活用が進んでいくでしょう。現在は、ひとかたまりのテキストを自動分類することはある程度可能なのですが、文章を自動で生成するためにはまだ技術的な課題があります。自動翻訳の研究が進んでいますが、翻訳された文章を私たちが読むと明らかにおかしいですよね。この辺りの研究開発が進めば、より実用的になり、AI を身近に感じるようになっていくでしょう。

ICR 最後に、AIシステム構築をお考えの方にメッセージをお願いします。

雪島 当社では、数理科学のアプローチでさまざまなビジネス課題の解決にご協力しています。お客様がお困りの課題に対して、AI のコア技術、そしてお客様との緊密な対話から得られる気づきやアイデアをもとに、課題解決につながる仕組みやシステムをご提供いたします。解決したいことがありましたらご相談ください。

<当社コア技術による最近のシステム開発例>
● 超高層建造物のAI制振制御
超高層建造物に装着した制振用の機械式ダンパーに対し、地震発生時、揺れに応じて最適なダンパー制御値を AI が指示し、長周期地震動を抑制。

● 患者生体情報に基づくAI診断
血液検査データなどの患者の生体情報をもとに、患者負担の軽減やガンなど疾病再発防止につながる各種診断を AI の技術を利用して実現。

● カルテ情報解析による診断支援
診療時のテキスト記録を自然言語処理し、生体情報やゲノム情報と関連付けて分析し、診断の参考となる医学情 報をAI技術により検索、提示。