滋賀大学 データサイエンス学部 河本 薫 様 製造現場のデータ分析、ヒアリングから問題解決まで、ベイジアンネットワークを活用

  • HOME
  • 製造現場のデータ分析、ヒアリングから問題解決まで、ベイジアンネットワークを活用

「因果連鎖分析とベイジアン」による 問題解決を学生に教える

2021年3月 4日 19:00

日本の大学で、学部として最も早く開設された滋賀大学データサイエンス学部。ここで河本 薫教授は、民間企業での経験や人的ネットワークを活かし、第一線のデータサイエンティストや企業の協力も得ながら、実践的な授業を展開している。2020年度にゼミで実施したBayoLinkSを用いた「因果連鎖分析」に関して、河本教授に伺った。

Profile:滋賀大学 データサイエンス学部 河本 薫 教授
1989年、京都大学工学部数理工学科卒業、経済学博士、工学博士。1991年より大阪ガス勤務、ビジネスアナリシスセンター センター長などの傍ら、東京大学先端科学技術研究センター研究員、大阪大学基礎工学研究科招聘教授としても活動。2018年4月より現職。丸の内アナリティクス理事、平野町アナリティクスHub発起人。『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)、『現場の能力を引き出すデータ分析の6つの型』(ダイヤモンド社)など、著作・論文多数。
河本 薫 教授
滋賀大学 データサイエンス学部
河本 薫 教授

製造業で注目されている、分析の新たな方法論

ビジネスの現場から教育の場へ転身されましたね。

河本 私は民間企業に27年間勤め、前職の大阪ガスでは現場の業務課題をデータと分析力で解決する仕事に携わったほか、データ分析専門組織の立ち上げや、後進の育成なども行ってきました。滋賀大学でデータサイエンス学部開設の折、当時の学長から話をいただき、学部開設1年後の2018年4月に教授として赴任しました。現在、学部生の授業のほか3回生、4回生のゼミおよび大学院生の指導も担当しています。 データサイエンス学部は開設4年目を迎え(取材時)、第1期生の就職が次々と決まっています。情報産業、製造、金融、インフラ、建設、流通小売など各界の企業様からご採用いただき、本学部の教育が一定の評価を受けたと考えています。

学生たちには、どんなことを期待されていますか。

河本 いま、社会では「データ」「AI」が大きなキーワードになっています。それらを使いこなせる素養を持った人を研究や開発の分野はもちろん、ビジネスの現場にも増やしたい。その中からはやがて、データや AI を武器に会社を率いるような経営者も出てくるはずです。そうなれば企業が強くなりますし、日本全体もきっと良くなるはずです。そうなることを願って、私は学生たちと向き合っています。

製造業で役立つ分析演習を行ったそうですね。

河本 日本の強みは、やはり製造業です。そしてこの業界におけるデータ解析の一番のニーズは、不良発生の原因を追究して解決することなのです。ここでそのプロセスを経験しておくことは、学生たちにはもちろん企業にとってもきっとプラスになると考え、このテーマを選びました。
そのための方法論としてAGC株式会社の小野義之様が新たに提唱されているものがあります。それは小野様が独自に確立された「因果連鎖分析」と、ベイジアンネットワークとを組み合わせたものです。私はこの方法に大いに触発されました。そこで、小野様主導のもとNTTデータ数理システムとも連携して製造業各社を集めた勉強会も開催し、この方法論の実践や応用を探求しています。こうした流れもあって、私のゼミで取り上げることにしました。ゼミでは小野様に講師としてご参加いただいたほか、因果連鎖分析の勉強会に参加されたJX金属様にも課題とデータをご提供いただき、また、授業でも大変ご協力いただきました。授業は12人のゼミ生を4グループに分け、約4か月間、全8回にわたって行っています。

ゼミの演習はどのように進めましたか。

河本 JX金属様からご提供いただいた実際のプラントの施設図と、各部の温度や圧力など操業に関わる実データから、操業中の課題を解決することをゴールに設定しました。設備がどう変化すると、それがどのようにデータに表れるのか、各因子の因果関係を学生たちからJX金属様に直接ヒアリングさせ、因果連鎖分析の手順に従って整理してもらいました。その上で、因果関係をベイジアンネットワーク上で構造的、階層的に展開しながら、問題の原因となっている因子を探っていきました。別途、機械学習の手法でも解析を行い、両者の方法論の特徴や違いを体験してもらいました。

ゼミでのディスカッションの様子

河本ゼミでのディスカッションの様子

現場の「腹落ち」をいかにして得るか

ベイジアンネットワークを使われたとのことですが、その有利な点は何ですか。

河本 製造業でのデータ解析は、結果を見た現場のかたが「問題はこれだ」と腹落ちして、解決するためにアクションを取らなければ何も変わりません。そういう状況を作り出すために今回の方法論はとても有効です。製造現場では担当者が意識していない暗黙知が数多くありますが、それが因果連鎖分析によって可視化できます。さらにベイジアンネットワークを使うことで、「ここの温度が上限値以上になる場合には、ここの圧力はこのように変わる」といった感じで、因果のプロセスを視覚化した状態でコミュニケーションでき、納得感を勝ち得る確率が圧倒的に高くなります。機械学習でも同じような解析結果を得ることはできますが、結果しか示せないためベイジアンネットワークを使ったときのような納得感を得るのが難しいです。

BayoLinkS の使い勝手はいかがでしたか。

河本 ベイジアンネットワークを自分でプログラミングするのは大変です。特に今回は因果連鎖分析などの事前作業が多いため、プログラミングの負荷はできるだけ減らしたいと考えていました。BayoLinkS なら、データと各ノードの関連性を与えればベイジアンネットワークが構成できます。さらにあるノードの状態を変えたときに、他のノードの確率がどう変わるかといった結果が、その場でグラフィカルに表示できます。今回のように原因追究に使う場合には、BayoLinkS のようにグラフィカルインターフェイスでユーザビリティが高いソフトウェアは非常に有効です。因果関係の仮説を見つける際には、条件を変更して繰り返しリトライできますし、感度分析の結果を用いれば、条件が変わったときの効果を一覧的に確認でき、今回の授業にとてもフィットしました。 また、ゼミではベイズ推論の概念を学生たちに理解してもらうことにも注力しました。ベイジアンネットワークを数学的に理解した上で使って欲しいからです。今回、NTTデータ数理システムから理論講習のほか、BayoLinkS の使い方などのサポートもあり、助かりました。

BayoLinkSを用いた確率推論の実行方法

  1. 推論モニターを表示
  2. 確率推論を実行し、事前確率を表示させる
  3. 推論モニターの緑の部分を右クリックし、エビデンスを設定する
  4. 確率推論を実行し、事後確率を計算する

確率推論の実行方法

今後、どのような授業をされたいですか。

河本 このゼミで、学生たちは製造現場の人と一体となって原因追究する方法を実体験できたのではないでしょうか。私は、効果的な教育のやり方は、成功や失敗の体験を学生たちに積んでもらうことだと思っています。今回のように、ある課題に対してはこういう手法を使うとうまくいく、いかない、ということを学生たちにもっと経験してもらいたい。そして実社会に出て同じような場面に遭遇したとき、適した手法を使えるようになってほしいと思っています。ほかにもエージェントシミュレーションなど、学生たちに体験してもらいたい手法があります。NTTデータ数理システムのソフトウェアやサポートを活用しながら、授業の幅を広げていきたいと考えています。

おわりに

今回は、大量のデータから依存関係を抽出し、わかりやすいインターフェースでベイジアンネットワークを構築するソフトウェア「BayoLinkS(ベイヨリンクエス)」を活用していただいた事例についてご紹介しました。 ベイジアンネットワークを活用した課題解決や BayoLinkS について、少しでも興味をお持ちいただけたでしょうか?製品について詳しく知りたい方は、BayoLinkS のページをご覧ください。製品紹介のオンラインウェビナーも定期的に開催しております。

セミナー情報はこちら

また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。