世界的な総合電子部品メーカーである村田製作所様。技術・事業開発本部に所属する共通基盤技術センターでは、開発効率2倍を目標に AI を全社共通の技術とするべく新たな取り組みに着手。NTTデータ数理システムとともに、Visual Mining Studio(以下、VMS)や Visual R Platform(以下、VRP)、Deep Learner の各ツールを利用したデータサイエンティスト育成プログラムを実施し、次世代を担う人材育成を行っている。
児堂 おかげさまで当社はこの10年で売上げが3倍に伸長し、それにともなって開発案件が増え規模も急速に拡大しています。そこで「開発効率2倍」を目標として掲げ、今までとは違う開発手法を模索しました。
AI は、こうした中から浮かび上がってきた次の開発技術のひとつです。現場では、実際の実験結果などリアルな現象をもとに研究・開発を行っていますが、同様のことが AI やシミュレーションなどバーチャル環境でも可能になっています。そのAI技術を当社全事業部門の共通基盤にすることで、開発効率を目標としている2倍に高めたいと考えたのです。
もちろん、当社でも各事業部でAI技術の開発や応用にいち早く取り組んでいますが、いずれも製品を起点とする技術で、そのノウハウや知見は製品や担当者に限定されたものでした。今回の取り組みは、AI を全社的な技術開発の共通基盤とすることが目的であり、その点が特徴的といえます。
今回の取り組みのプロセスをお聞かせください。
興膳 具体的な検討は2018年の暮れからで、当センター内で部門横断のチームを作り、開発効率2倍の目標をクリアするにはどうするべきかというところから議論をスタートさせました。その中で、開発プロセスにおける AI の利用価値や、データサイエンス教育の必要性に気づき、今回のAI教育プログラムの実施に至りました。
AI技術を目的に応じて柔軟に使い分け、開発を効率よく進める、そういうデータサイエンスの資質を備えた人材を社内で育てることが今回の目的です。そのためには、ディープラーニングやニューラルネットワークなどの個別技術のほか、それに付随した幅広い知識の習得が欠かせません。また、モデリングや統計的な分析手法を身につけたり、各種ツールの利用など作業を効率よく進めていくための応用力を身につけたりすることも必要です。
AI の教育サービスを行っている企業はありますが、特定の技術に特化して行っている場合がほとんどで、一般教養を身につけるようにAI技術を習得させたい、という我々のニーズを満たすプログラムはありませんでした。そこで、以前から AI や機械学習の開発で取引のあったNTTデータ数理システムに相談し、データサイエンティスト育成プログラムを作成・実施してもらいました。
同社は数理科学の専門家がたくさんいますし、VMS など汎用ツールも多彩に開発しています。今回の我々のニーズに、まさにうってつけだと思いました。