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村田製作所様のデータサイエンス教育プログラム関連記事
Profile:株式会社村田製作所 様 1944年創業、コンデンサやセンサなど電子部品の製造からそのアプリケーション開発・提供まで展開している総合電子部品メーカー。最先端材料の研究開発、広範囲な製品ラインナップ、グローバルな製品・販売ネットワークを強みに成長。チップ積層コンデンサでは40%、ショックセンサでは95%の世界シェアを獲得している。
技術・事業開発本部 共通基盤技術センター
企画管理課 シニアマネージャー 興膳(こうぜん)義明 様(中央)
企画管理課 チームリーダー 中村 武治 様(右)
企画管理課 徳本 直樹 様(左)
“孤独”になりがちなオンライン講義、それを防ぐために
2期目になってプログラムに変更はありましたか。
中村 本プログラムは、AI や機械学習について「知る」「分かる」「使える」ことを座学や演習を通じて学び、さらに実案件への応用を通じて「できる」「教える」ようになることを目指しています。2019年度は1期生として共通基盤技術センター内の開発者を対象に実施しました。センサタグのデータを素材にNTTデータ数理システム協力のもと VMS で機械学習モデルの構築や検証を行い、Visual R Platform で統計モデルの構築、さらに Deep Learner でディープラーニングモデル構築などを行いました(2019年度の本プログラムの様子 )。
そして2020年度は、受講対象を材料系の開発スタッフまで広げました。当社の主力製品の1つに積層セラミックコンデンサがあり、製品材料の組成開発や分析は重要な業務です。材料開発では無数の材料の中から最適な組み合わせを、実験を重ねて探し当てる作業があります。その効率化のために、2期目のカリキュラムに新たにベイズ最適化を取り入れました(カリキュラム追加前のベイズ最適化のコンサルティングの様子 )。
オンライン開催のご苦労や工夫はありましたか。
徳本 従来のオンサイトによる開催であれば、講義後に受講生間で意見交換して自分の到達度を確かめたり、分からないところを聞いたりできます。しかし、オンラインだとそういったことができず、受講生は孤立感を感じモチベーションが下がってしまう傾向があると聞きました。どうすればいいか、我々がまず重視したのは、受講生とのコミュニケーションです。メールやweb会議などで連絡を取り、疑問や質問に丁寧に答え受講生に寄り添いました。受講生の中には、オンライン開催に不安を持つ人もいて、それに対しては「1年を通してみんなで学んでみましょう」といったフォローで不安や孤立を感じさせないように努めました。
また、講義は動画にしてもらうようNTTデータ数理システムに依頼しました。もし、講義を欠席することになった場合でも、あとから内容を確認できるようにするためです。また講義中は、30分程度の間隔でチャットによる質問を受け付ける時間を取ってもらったり、その回答リストを講義後に配布してもらったりしました。
講義以外に対面による演習も実施したそうですね。
徳本 前年度は、講義で学んだ機械学習や統計手法の応用的な力をつけるために、グループで実際にデータを分析する総合演習を行いました。とても有意義だったので、2020年度も実施することにしたのですが、コロナ禍での実施方法についてはすごく悩みました。受講生が集まってワイガヤした方が、さまざまな成果が期待できます。しかし、受講生が全国の事業所に散らばっていたこともあり、考えた末、受講生が多い本社と野洲事業所ではオンサイトを基本に、その他はオンラインというハイブリッド・スタイルを試行してみました。その結果、オンサイトのグループの方がゴールに至るまでの時間が早かったのに対し、オンラインは細かなコミュニケーションを数多く重ねゴールへたどり着きました。それぞれの傾向が見られたと思います。
データ収集、加工、分析のためのソフトウェア開発にかかる時間をなくし、実作業に集中するために VMS など各種ツールが活用されている。
開発効率2倍、そして AI を当たり前に
2期目をどのように評価されていますか。
徳本 オンラインでできること、できないことが、この1年間の取り組みで見えてきました。例えば座学は知識中心なのでオンラインでもできそうですが、総合演習はチームでの取り組みになるため、オンサイトの方が意思疎通が早く短期間で良い結果が出せそうです。それぞれのメリットを活かしながらいかにバランス良くマネジメントしていくか、それが次の課題です。
興膳 これまでは講習のたびに1か所に集まっていましたが、本当に必要なときにのみ集まるようにすれば受講生の負担が減りますし、出張費などのコスト減にもつながります。またリモート会議ツールなどのITテクノロジーも進化しており、さらなる活用も期待できそうです。コロナ禍、我々は大変な体験をしましたが、その経験を次に活かしたい。そうすることで、コロナ禍もプラスに転じさせたいと私たちは考えています。
NTTデータ数理システムからのサポートへのご感想はいかがですか。
中村 コロナ禍という未体験の状況だったので、プログラムの進行にあたってはNTTデータ数理システムと綿密に協議し工夫を重ねました。先ほども説明したように講義の進め方、受講生のフォローなどに協力してもらい感謝しています。
また、この教育の一環として修了後の受講生のスキルアップもサポートしています。現在も、例えば自然言語処理など関連する技術やその知識が必要になったときなどにNTTデータ数理システムにコンサルティングを依頼していますが、そういった対応も引き続き期待しています。
1期生の活動状況を教えてください。
中村 社内の各部署でそれぞれに活躍しています。自分の業務のほか、他部門からの解析依頼なども請け負ったりしています。データを集める、ラベルを付ける、検証と学習に分けるといった AI の基礎をこのプログラムでしっかりと身につけているので、それを活かすことで画像分析や時系列分析など幅広い案件をこなすことができています。私も1期生で、事務局の業務のほかに時間を作って AI の案件に取り組んでいます。
また1期生たちには、2期生のサポート役としても活動してもらっています。センサや材料など所属部署での分析案件は同じ方向性があるので、お互いにコミュニケーションを取って不明点などを解決しています。今後、修了生が増えることで、さらなる相乗効果も期待できそうです。
今後の抱負をお願いいたします。
興膳 「開発効率2倍」「AI を当たり前に」というキーワードでこのプログラムを企画しましたが、やっとそのスタートラインに立てたと思っています。これまで2期にわたってプログラムを実施し、それによって社内に AI を使った開発が浸透しつつあります。社外からも「AI教育をしているそうですね」と声をかけられることが増えました。このペースでプログラムを継続していけば、キーワードはきっと実現できることでしょう。AI自体の進化や、コロナ禍のような社会的な問題が今後も出てくるとは思いますが、目標達成に向けて着実に取り組んでいきます。
おわりに
NTTデータ数理システムの提供するデータサイエンス教育プログラムについてご紹介しました。座学の知識を実践につなげるワークショップの開催など、ご要望に合わせて柔軟に対応いたします。また、1名から参加可能な集合形式の教育プログラムも実施しております。ご興味をお持ちいただけた方はデータサイエンス教育プログラムの詳細ページ をご覧ください。
データサイエンス教育で利用している分析ツールはNTTデータ数理システムが開発・販売しています。AI・データ分析を内製化できるデータ分析プラットフォーム Alkano (VMS と VRP、DL を統合した2021年10月リリースの後継製品です)を始めとした、様々な分析ツールをご提供しています。定期的に製品について紹介するオンラインウェビナーを無料開催しておりますので、気になった方はぜひご参加いただけると幸いです。
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また、弊社NTTデータ数理システムでは、長年培ってきた数理科学の技術を基に、お客様のご要望に合わせた受託開発を承っております。「データはあるから何となく何かをやりたい…」というきっかけでも大丈夫です。お客様が解きたい課題を弊社技術スタッフが一緒に課題整理を行いながら、ご要望に合わせたご利用形態で課題解決をサポートします!ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談いただけると幸いです。