- HOME
- 2022年度 S4 Simulation System 学生研究奨励賞レビュー
2023年4月21日 13:34
今回は2022年度 S4 Simulation System 学生研究奨励賞を受賞された研究の紹介をします。
S4 Simulation System(S4)は離散イベントシミュレーション、連続型シミュレーション(システムダイナミクス)、エージェントシミュレーションを扱う事ができる汎用シミュレーションシステムです。
そして、S4 Simulation System 学生研究奨励賞は、S4を用いた学生の学術研究の支援・啓蒙および発表の場の提供を目的とした制度で、 2014年度より開始されました。優秀な研究は、「数理システムアカデミックコンファレンス」にて、発表頂いております。
今回の紹介でこんなシミュレーションも S4 でできるんだ、ということを知っていただけたら幸いです。なお、昨年度以前の学生奨励賞の発表スライドはこちらにあります。あわせてご覧ください。
早稲田大学 経営システム工学専攻
三須 由希 様
感染症の実効再生産数の推定式の妥当性と人と人との繋がりのネットワーク構造の関係をシミュレーションを用いて検証しています。
今回の研究では感染症の数理モデルとしてよく使われるSIRモデルではなくエージェントベースのモデルを採用しています。エージェントベースのモデルを使用することで研究目的に適した実験が行えたのではないかと思います。
神奈川大学 工学部 経営工学科
橋本 悠汰 様
製造業において部品のリユース(用途変換)をすることで部品の廃棄量および新造量を少なくできることをシミュレーションを用いて示しました。 またコストに関する条件を変化させてどのような場合に用途変換システムが成立するのか検証しています。
S4上で構築した用途変換を行わない従来のモデルを用途変換に対応したモデルに上手く構築し直しています。 また、用途変換システムが成立する条件に関する実験も興味深いです。
早稲田大学 大学院 創造理工学研究科 経営システム工学専攻
櫻井 陸 様
駅構内のエスカレータでの方向の有り無しやエスカレータの位置を変えた場合で乗降客の輸送効率や滞留率をソーシャルフォースモデルを使ったシミュレーションで評価しています。
実際に存在する駅を調査してソーシャルフォースモデル環境を構築しており実用性を重視していると感じました。
神奈川大学 工学部 経営工学科
長谷川 晴海 様
業務の手順書を導入する場合とそうでない場合で新人の技能習熟度にどのような差が現れるのかシミュレーションで検証しています。
より複雑なタスクやタスクの質を考慮した場合など今回のものを拡張した実験結果を見てみたいと思いました。
早稲田大学 創造理工学部 経営システム工学科
平井 杏佳 様
モバイルオーダーが店舗の売上に貢献する要因とさらなる利益獲得のためにどうすればよいか離散イベントシミュレーションを用いて実験しています。
実際の店舗のレイアウトを考慮したうえで業務フローを上手く離散イベントシミュレーションモデルに落とし込んでいます。
神奈川大学 工学部 経営工学科
海瀬 蒼太 様、出口 拓海 様
段取り時間や緊急のタスクの発生が不確実な状況での生産スケジューリング方法を提案し、シミュレーションによって従来のものより有効であることを示しています。
今後の展望にもありますが、今回のスケジューリングの段取り時間のばらつきの有効範囲を実験して確認してみると面白いと思います。
神奈川大学 工学部 経営工学科
田中 優希 様
製造業における不確実性を考慮した複数の長期設備投資計画をシミュレーションを用いて比較評価しています。
今回は工場が予定通り生産可能かどうか検証しましたが、どのような設備投資が費用対効果を最大化できるのかシミュレーションしてみると良いかもしれません。
早稲田大学
三須 由希 様、冨澤 千哉 様、鎮西 由芙希 様
音楽フェスという人が密集する場合の感染症の拡大についてセルオートマトンモデルでシミュレーションを行って、どのような場合に感染拡大が起きるのか検証しています。
シミュレーションが終わったときにステージ側に人が密集しているというフェスにありがちな状況が再現できているのは興味深いと思いました。
早稲田大学 大学院 創造理工学研究科
津布久 竜也 様
チャットツールなどの新システムを組織内で導入する際の普及速度に関するシミュレーションを行っています。
導入前からシステムが使える人の割合に関わらずシステム導入補助者が3人以上の場合いても2人の場合と普及速度がほとんど変わらない点が興味深いです。
芝浦工業大学 大学院 理工学研究科 システム理工学専攻
小坂 祐輝 様、小平 和 様 橋本 樹 様、渡邉 直人 様
年金給付開始年齢を変化させたときに国民の月々の年金負担額がどれくらい変化するのかシミュレーションしています。
今回は固定にしているパラメータをいくつかのシナリオに基づいて変化させたときの結果がどうなるのかが気になりました。
芝浦工業大学 大学院 理工学研究科 修士課程 システム理工学専攻
原口 隆彦 様、仲田 記士 様、山崎 佑太 様、亀井 雄貴 様
集団内のエナジードリンクによるカフェイン中毒者数をSIRモデルを用いてシミュレーションしています。
各種パラメータを現実のデータに基づいて決めるとより説得力のあるシミュレーションになるのではないかと思います。
東京理科大学 理工学部 経営工学科
鈴木 雄貴 様、松田 樹梨佳 様
倉庫内の通路の幅を変化させて荷物のピッキングにかかる時間をソーシャルフォースモデルを用いてシミュレーションしています。
通路の幅を広くするとそれだけ置ける棚の数が減ってしまうのでそのトレードオフ関係に着目してみると面白いかもしれません。
東京理科大学 理工学部 経営工学科
小野 柊馬 様、松田 樹梨佳 様
複数の会社が同じ倉庫を利用するような状況で、どのように倉庫内を区分けすれば効率的なピッキングを行えるのかシミュレーションで実験しています。
実際にこのような状況でピッキングを行っている倉庫を調査して、そのレイアウトとの比較をしてみるとより説得力があるシミュレーションになるかと思います。
今回は2022年度 S4 Simulation System 学生研究奨励賞の紹介を行いましたが、こちらには S4 Simulation System を実際にご利用頂いている企業様、学生様の事例をご紹介しています。 こちらもぜひご覧いただけると幸いです。